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Rec.吹奏楽団

鉄と演奏会感想noteは熱いうちに打て、ということで(?)先日1月14日(日)に行われたRec.吹奏楽団(以下、リッ吹と呼びます)の感想をまとめます。

といいつつも既に本番から5日経っている。

今でもあの日の録音を聴いてはいい演奏会だったな、またあのメンバーで演奏会したいなと、リッ吹ロスを引きずっている…。


1.  卵の状態のリッ吹のお話


時を戻そう(松陰寺voice)

2年前、メモコン2022の帰り道、団長と一緒に帰っていた時のこと。

団長「リコーダー出てくる吹奏楽曲を集めて演奏会してみたい!名前はリッ吹

ワイ「モンタニャールとかレミゼとか?面白そう!もしやるんだったら指揮振らせてー」

多分こんな話をしていたと思う。

これが卵の卵の状態だった頃のリッ吹。
団長のクラブネームである「リック」の「リ」と「リコーダー」の「リ」を掛け合わせた楽団名である。

そこから時が流れて、2022年の8月末。

今度はふるだぶりねっとコレクション2022の帰り道にも、卵の状態だったリッ吹の話をしていた。

団長「こんなプログラムで演奏会をやるのはどう?リコーダーが出てくる曲なら自由に変更可

ワイ「めっちゃいいやん。運営集めてやろうよ

多分こんな話をしていたと思う(2回目)。
(※昔すぎて記憶が定かではありません)

そんなこんなで(?)「全曲にリコーダーが登場する」をコンセプトにしたRec.吹奏楽団、通称リッ吹が本格始動することになった。

その後9月くらいに、なぜかラーメンアイコンの運営ラインに招待され、リッ吹の運営としてこの演奏会に携わることになった。

ネギがいっぱい乗っているラーメンだったので、僕の中のリッ吹のイメージカラーは黄緑色だった。


2.唯一の市大卒運営


「全曲にリコーダーが登場する演奏会」というコンセプトに釣られてリッ吹の運営することになったのだが、蓋を開けたら僕以外の運営メンバーは全員府大生公立大生であった。

彼の中では、リコーダーというコンセプトとは別に、「その演奏会を、府大・公立大(同じ部活)のメンバーで」という構想もあったんだろうが、僕はそんなことはつゆ知らず、ずかずかと運営に入ってしまったのであった。

今でこそ市大と府大は統合して公立大となり、その名前も馴染んできた頃である。

団長とも同じ大学院の同じ研究科にあたるが、学部時代は他大生であり、同じ部活で活動してきた訳ではない
(ただしこの界隈には六大という繋がりがあったので、1回生の頃から知り合いではあった)

そして迎えた奏者募集も、ものの見事にほとんどが府大・公立大生で埋まった。
(近年企画演奏会が乱発している中で、88人も奏者が集まったことは本当にありがたいことです)
(そして府大・公立大以外からリッ吹に乗ってくださった奏者さんも、本当にありがとうございました)

その状況を見るやいなや、

やったな。
全に僕が出る幕ではなかったのに、出しゃばったな。
みんなは僕のことを受け入れてくれるのだろうか。

と、メンタルヘラッヘラになるくらいの不安若干の後悔を覚えながらも、しかしやるといった手前引き返すこともできないので、責任もって最後までやりきろうと自分に言い聞かせる日々であった。


3.部活のような雰囲気で進んだ練習


さて、不安で仕方なかったリッ吹の練習も、ふたを開ければ奏者の皆さんは僕含めた非府大・公立大生のことも温かく受け入れてくれて、和気あいあいとした雰囲気で進んでいった。

先輩、同期、そして下は1回生まで、幅広い年代の奏者が集められたリッ吹はまさに部活そのもの。

部活を引退してからいろいろな団体に乗ってきたけど、ここまでアットホームな環境で吹奏楽をできたのは初めてだった。

そして皆が同じコミュニティに属していたからこそ、音色がまとまるのがすこぶる早かった。というより最初からまとまっていた。

だからこそ、すごく合奏がしやすかった。


4.本番トーーク


「まぁ僕は本番が一番良い演奏になるって分かってるんで多分大丈夫でしょう」

これはリハの時に言ってみた自信過剰発言だが、僕は経験上企画バンドは本番が一番いい演奏になると信じていたし、実際その予想的中することとなった。

もちろんリッ吹は、合計の練習回数が16回と他の企画バンドの1.5倍くらいの回数があったのもあるが、それでもどの練習のどの通しでやった時よりも本番の演奏はまとまりがあり、そして熱量を感じられた。

メイプルホールは舞台は広いが客席は狭いので、おそらく何度かホールを爆破してしまっているだろう。

まぁそれは奏者の気持ちが乗った結果なので許してちょんまげ。

せっかくなので、一曲ずつ感想をば。


In The Winter of 1730 ~ The Rever's journey~

記念すべきリッ吹のオープナー。
最後までどこを取って呼んだらいいかわからなかったけど、「川の旅」で定着している気がする。

The スウェアリンジェンの単純明快で、リッ吹では一番取り組みやすい曲ではあったが、楽しい曲ではあったので最後まで飽きずにやれたと思う。

録音聴いてみたらまぁ元気なこと、この後4曲(しかも3部にモンタニャールとモンタニャールと受難が控えてる)のにバンバン鳴らす。

まぁいいことよ。楽しかったもんね。わかる。

あ、冒頭のリコーダー、はるばる宮崎からやってきた同期が担当してたんだけど、初めて合奏で聴いたときから上手すぎて聞き惚れていた。

宮崎からやってきたリコーダーの妖精さんかと思いました(?)。
もう次会えるのはいつになることやら…。


カプレーティとモンテッキ~ロメオとジュリエット、その愛と死~

吹奏楽歴12年にして初の天野正道作品。

実を言うとチューバ譜はクソおもんないので(ごめんなさい正道先生)途中まで全然好きじゃなかったけど、ある日代振り合奏をしたときに確変が起きた。

正道作品特有のドロっとしたうねりのある旋律が性癖に刺さりまくった、やりがい皆無(ごめんなさい正道先生)に見えていたチューバ譜も、俺がこのメロディを支えているんだぜと言わんばかりに楽しく思えてきた。

そして牛乳くん(指揮者のあだ名)!
君はそんな表情をして振るんか!

本番憑依型指揮者の表情と棒に感動しながら10分を過ごした。

彼の指揮は1年前のサマーコンサートぶりであったが、あの頃よりも成長した姿を見れて親戚のおじさん気分だった。

4人の指揮者で間違いなく彼がロメジュリ指揮者で適任だった。
彼にしか出せない演奏だった。

彼は2年後の1月に演奏会をやるらしい。

チューバの枠空いてたらまた彼の指揮で吹いてみたいなぁ、、
まぁそのころは26歳のおじさんなので自重しないといけませんね。


レ・ミゼラブル

1回の時のスプリングコンサートでマーチングをした曲。
そしてETC3rdで振るはずだった曲。

何回やっても飽きないカッコイイ曲だね。

バストロとゼネコンしまくるのが楽しかったな。

さて、曲の難易度的におたけ曲は合奏時間短めになりがちだったが、それでもオープナー含めてレミゼも完成度高めだったと思う。

ETCの頃から思っていたがおたけはかなりスマートに合奏をこなす。

フィードバックの時間よりも吹いている時間が長いから、短い合奏時間でもここまで完成度を高められたんだと思う。

Wind Orchestra 松竹梅の発足まだかな。


モンタニャールの詩

個人的、今回の演奏会の目玉曲。

高2のコンクール曲、金賞にあと一歩及ばずの銀賞で涙を飲んだのも7年前の話。

今回は全曲カットなしでできる喜びを噛みしめながら、あの日の雪辱を晴らすことができたかもしれない。

指揮者スピノは高校で指揮者経験はあったらしいが、副指揮者時代も正指揮者時代もコロナ丸被り世代だったので、吹奏楽の合奏をすることも、有観客の吹奏楽編成で本番をすることも久しぶりのことだったと思う。

そんな中でも彼はモンタニャールを振り切った、本当に立派だった。

インターンや研究室で忙しいM1の夏から冬に合間を縫ってモンタニャールに身を捧げてくれたので、本当に感謝しなければならない。

鋭いまなざしもちょっとはにかむような微笑みも素敵だったな。

いやぁにしてもあの変拍子振れる気しない、スピノすごい。


キリストの受難

ここに書いてしまうと軽く1万字をオーバーしてしまうので心の中にしまっておきます。

ただ一つ言えることは、あの16分間は、今でも鮮明に思い出せるくらい幸せな時間でした。

録音もう30周は聴きました。


アンコール!

正直アンコールなのでなめプしてました。

これも高校引退した次の年の定演のオープナー(なんで)だったので多少は思い入れはありつつ、、まぁみんななら何とかなるでしょうと集中練の2回目まで寝かせてそこから2回くらい合奏して本番。

でもいざ本番で振ると楽しすぎて、もっと合奏して楽しんでおけばよかったなーと若干後悔中。


木陰の散歩道

口笛の部分はリコーダーでやったら良いやんと提案し顰蹙を買ったこの曲。

めちゃ難しいのにたくさん練習していただいたおかげでリコーダーの大アンサンブルの出来上がり。

後ろでパーカッションが横揺れしてるのが可愛かった。


5.キリストの受難と過ごした10ヵ月間


さて、今回リッ吹ではメイン曲である「キリストの受難/F. Ferran(3楽章のみ)」を振ったが、正直この曲は団長が持ってくるまで全く知らなかった

他にもオープナー、ロメジュリも知らない曲だったので、「まぁどれもわんちゃん振るかもしれんし聞いてみるか~」と40分ある受難の音源を聴いてみたが、その時に抱いた感想は「うわぁめっちゃHeavy。僕キリストのこと全然知らんしこんなん振れる気しないわ。やったことあるからモンタニャール振ろかな」であった。

全体的にダークネスな曲調、美しい旋律もあるが轟くような半音階と緊張感マシマシの打ち込み、そして初見ではもう何やってるか全然わからない喧噪ゾーン。

これまで全くやったことのない系統の曲だったので、まぁきっと僕がモンタニャールやりたいって言えば次男のスピノが受難振ってくれるでしょうと思っていた(鬼の他力本願)。

しかしどうでしょう、5回くらい聴いたらだんだん良さに気づいてきた。

激しさの中にある美しさ、臨場感あふれる物語性のある曲、もしかしたらこの曲振ってみたいかも?と思うようになり、10回くらい聴いた段階で「もう受難しかない!全体に受難振りたい!」と神にもすがるつもりで合掌し…あぁそれは仏教か、それはいいとして、噛めば噛むほどこの曲の魅力にどっぷりとつかっていった。

3月に行われた指揮者会議では、指揮者4人で振りたい曲にランク付けして誰が担当するかを決めることにした。

1位にキリストの受難を選んだのは僕だけだったので、即決で振れることになった。マジ歓喜

さて、いざ振ることになってから3つのでかい壁にぶつかった。

① 10分以上の曲なんて振ったことねぇ
② グレード6の曲なんて振ったことねぇ
③ イエス・キリストのことなんてなんも知らねぇ

正直①と②は練習すればなんとかなるかと思っていたが、③に関しては本当に致命傷で、その当時「イエス」に関する知識は「最後の晩餐」「死んだ後になぜか復活する(そんな非科学的な話あるんかというツッコミも込みで)(←キリスト教の方に怒られてしまえ)」の2つしかなかった。

イエスの人生を描いたこの曲を振るのに、なんにも知らないのはさすがにマズすぎる!!!!

ということで、ネットの情報(とChat GPT)を駆使してイエス・キリストの人生やその背景にある社会情勢までを納得するまで調べ、レポートを作ってまとめることにした。

これをやることで僕のこの曲への解像度愛情爆上がりしたし、それを元に音型を揃え音量を揃えニュアンスを揃え…ふるだぶ2023で鍛えられたマシンガントークをかましながら合奏を進めていったら、12月頭の集中練の時点でもうかなり形が見えるようになっていた。

①、②に関しても、翻弄される部分が多々あった。

普段はスコアはあんまり読まない(おい)(←耳で読んでます)が、こればっかりは誰がどんな動きを誰とやっているのかが全然わからず、合奏中にグダグダすることも多かったので、スコアに色鉛筆でグループごとに色塗りすることで、なんとか構造把握に努めていった。

振り方についてもとにかくわかりやすさ重視、言葉ではなく棒で…とYouTubeで指揮動画を見漁って勉強し(最終的に指揮をしない指揮者の動画にたどりついてゲラゲラ笑い)、特に最後の3ヵ月くらいは修論とキリストの受難のことばかりを考える日々だった(とはいえ9:1くらいの比率)。


さて、このnoteを書くにあたって、7月についはいウインドという主に社会人で吹奏楽を続けている人たちがやっているすばらしい団体に参加したときのnoteを見返していたら、こんなことが書いてあった。↓

(前略)
しかしながら4人に共通していたのは、
「曲への深い愛情と優れた解釈力」であると考えている。

「え、お前も指揮者やってるんやろ?曲への愛情とか深い考察とかあって当たり前やんな?」

「読者さん、そりゃそうですよ…」

と声を大にして言いたいところだが、
あまり自信を持って「Yes」と言えないのが現状。

今思い返せば、これまでの曲作りはいい演奏の模倣ばっかりで、
全然自分なりの解釈を曲にこめられなかったなと反省するばかりである。

さて、ついはいの4人の指揮者さんは、
プログラムノートを見れば一目瞭然なのだが
曲の解釈、曲への情熱・愛情、イメージする情景描写、示したいポイント…
これらすべてが棒と合奏中の言葉で示されていた。

そんな指揮者さんの姿に惹き込まれていき、
やがてはそれぞれの曲の良さを知ることとなった。

間違いなく、ついはいの演奏は、
ついはいオリジナルと言っても過言ではない。

どの音源よりも好きな演奏だった。

そして何よりも、その曲を楽しそうに振る
そんな姿を見たら、奏者として音で応えるのが責務ってもんだぜ…。

ここで書いたことを意識していたのか、いや、無意識だったかもしれないが、キリストの受難に向き合っていた時間が、自然と過去の自分が書いていた自分への課題の克服にも繋がっていたのであった。

キリストの受難と向き合った10ヶ月間は、結果として自分の指揮者力を大いに向上してくれる期間だった。

そして、その甲斐あって宛名書きやアンケート、Twitterで「指揮が進化した」と多くの人に言ってもらえたので本当に嬉しかった。

酔ってたらこういうたゆまぬ努力があの姿を生んだんです~と調子乗ってべちゃくちゃ言いそうになりますが、正直ここまで納得する曲作りができたのも初めてだったので、とても満足しています。

あ、どこかから、もっと宇宙の音楽のスコア読めよって声が…。
いい加減、こんどはあの演奏会に本腰入れて準備していこう…。


6.総括:部活を引退した我々の居場所


さて、このnoteの総括です。

部活を引退したら、市民吹奏楽団のようなところに所属したり、誰かの立ち上げた企画団体に入って一緒に活動したり、新しいコミュニティに所属しないと吹奏楽を続けていくのは難しい。

もう一つ、自分で演奏会を立ち上げて知り合いを募るという選択肢もあるが、まずは一緒に運営してくれる仲間を見つけて、曲目を考え、予算を考え、ホールを抑え、楽譜を手配して、練習場所を抑え、打楽器を確保し、奏者を募り、練習して、ビラを作り、パンフを作り、本番の段取りを考えて、本番の取り仕切りをして、、、と書き切れないくらい労力のかかることである。

しかし、そんな労力のかかることを承知で団長が立ち上げてくれた結果、リッ吹という部活を引退した我々の居場所のような楽団ができあがった。

新しいコミュニティで新しい居場所を求めるのも大切だと分かってはいるけど、やっぱり、気心知れた仲の良いメンバーで演奏するのは、本当に楽しく心地良いものだ

リッ吹の良さは、そこにあったんじゃないかな。

リッ吹ではありがたいことに飲みに行く機会に恵まれ、特にM2の同期と来年以降の話をすることが多かった。

話を聞くと、すでに関東への引っ越しが決まっていたり、まだどこに配属されるか決まっていなかったり、この素敵なメンバーが離れ離れになるということをありありと実感した。

もう二度とこのメンバーで演奏できない。

それはどの演奏会でもいえることではあるが、コロナを経験した我々だからこそ、演奏会をできる喜びをかみしめて、素敵なメンバーとの貴重な時間を一分一秒無駄にせずに過ごしたいものである。

リッ吹で過ごした半年間は僕にとって青春ともいえる幸せな時間でした。

僕を「リッ吹」の指揮者として迎え入れてくれてありがとう。

最後までお読みくださりありがとうございました。

2024年1月18日(木)
Rec.吹奏楽団指揮者 深川ねずみ


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