MICEとツーリズムと観光資源

MICE

 先日投稿した「奈良県コンベンションセンター」に関する投稿で「MICE」というキーワードを記載しました。都市関係や観光関係に詳しい方なら、もはや基本用語となっている「MICE」について解説したいと思います。

「MICE」は「Meeting」=会議、「Incentive」=招待旅行・研修旅行、「Conference」=国際会議・学会、または「Convevtion」=集会・大会、「Exhibition」=展示会、または「Event」=イベント のそれぞれの頭文字をとった言葉で「マイス」と読みます。日本語に無理矢理すると「仕事上の催し物」と言ったとこでしょうか、少し違う気もします。

 この「MICE」は日本国政府(観光庁)や地方自治体で積極的に推進されており、2020年に開業した「奈良県コンベンションセンター」も奈良県によるMICE政策の一つと言えます。また、全国的に見てみればコンベンション機能や商業、宿泊、娯楽施設などを備えた「IR」(統合型リゾート)の誘致、開発も地域によっては積極的に進められています。

 「MICE」の要素となるそれぞれは、何も新しいものではなく、昔から「○○産業展」などの特定の業界の商品を展示する見本市や、企業や団体による集会は存在していました。今はこれを国際的に誘致していこうという時代です。

ツーリズム

 上で述べた「MICE」は「ツーリズム」の一つとして扱われます。「ツーリズム」は「観光」として日本語に訳される場合が多く見られます。しかし、MICEの要素となるような行為は「出張」であり、「観光」という言葉では違和感があります。このあたりが「ツーリズム」と「観光」の2つの言葉の間に差が生じていると言えます。

 そもそも観光は「余暇」の時間を使って日常生活圏を離れて活動することであり、ビジネス上の行動は「余暇」とは言えないでしょう。しかしながら、大きな意味で「観光産業」とした場合、出張の予約をする所は「旅行会社」であり、使う交通機関や宿泊施設はレジャー客もビジネス客も同じ施設となります。こう考えると、「ツーリズム」や「大きな意味での観光」が、決して余暇の時間を使って行う行動だけではないと素直に理解がしやすいと思います。

 「観光」や「ツーリズム」の違いや定義などと言った、はっきり言って「言葉の綾」のような事柄で、活発な議論や意味の確立をする必要は無いと考えていますし、世の中が厳密に使い分けている訳でもありません。何が一番お伝えしたかったかと言いと、これからの観光業界やツーリズムを語る上においては、休みの日の観光だけではないということです。

 一方、余暇の時間を使って日常生活圏を離れて行う行動にも変化が見られます。これまでの観光は旅行先での建築物を見たり、温泉につかったりと「物見遊山」が中心の観光でした。

 しかし、近年では農場での体験をする「グリーンツーリズム」やインフラ施設を見学する「インフラツーリズム」、アニメの舞台となった(何気ない住宅地などを含む)場所を訪れる「コンテンツツーリズム」、医療行為を受ける「メディカルツーリズム」など従来には無い観光のスタイルが確立されてきました。これらを「ニューツーリズム」とも呼びます。

 一部、湯治=ヘルスツーリズムなど従来行われてきた行動もありますが、観光地で見て回るという従来の観光に加え、これらが一般大衆に浸透してきている時代となっています。

観光資源

 これらの「ニューツーリズム」を語る時は従来の観光をする場所=観光地や観光スポットといった概念を取り払わなければなりません。ニューツーリズムが観光の対象とするものは何気ない街であったり、従来は観光の対象とされてこなかった地域だったりします。その対象は建物などのハードだけではなく、私たちの暮らしや祭りなどソフトなものも含まれます。

 ニューツーリズムにとらわれず、ツーリズムの対象となるものが「観光資源」と呼ばれます。特にこれまでその地域そのものが観光の対象としてこなかった場合には、その地に眠る観光資源を掘り起こし、磨き上げ、発信し、誘客につなげる例が多々見られます。

 特定の地域の取組については「着地型観光」と呼ばれています。これまでの観光業は大都市などから観光地へ旅行者が適切に観光ができるよう企画された旅行など「発地型」でした。「着地型」とはその逆で、観光資源を抱えた地域が旅行者を迎えるよう企画された旅行で、従来の観光ではなかった「その土地ならではの」体験が魅力の一つとなっています。

まとめ

 今回の記事では、最近よく耳にする「MICE」をフックに、「観光」「ツーリズム」の概念や「観光資源」の新たな概念についてまとめました。これからの観光やツーリズムは、従来の「休日に観光地を見て回る」だけではなく、MICEなどのビジネスツーリズムの誘致や、地域が観光資源を掘り起こし発信していく時代となります。

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