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#23クソみたいな日に名前を付けるとしたら④

幻のような夢を見た日の朝

アラーム音に気が付かず、寝過ごしてしまったのはいつぶりだろうか。
危うく寝過ごしてしまうところだった。
時刻は午前7時40分、天候は雨、覚めてしまった夢に首輪を着けられたまま動けなかった。                  懐かしい香りと変わってしまったことに対する嘆きが交わされていた。
うがいをしようと洗面所へ向かう。
顔についているのは情けなく生えている髭だけ。
ぼーっとしていた。

夢ではたまに会えている人が出てきていた。
2年半前のあの人と何ら変わりがなかった。               元気そうでよかったと思った。                     それから僕らは映画館へ向かった。                   何の映画を観たのかまでは覚えていない。                 あの人の横顔ばかりを見ていた気がする。

部活に遅れそうだった。                        急いでパンを焼き、お湯を沸かし、プライパンに卵液を流し込んだ。
今日は綺麗な形の卵焼きが焼けた。                  朝食を食べながらまた夢のことを考えていた。

映画の途中で席を立った。                      そしてトイレへ向かった。                      なぜかそこにいた友達と駄弁っていただけだった。
もしかすると映画は僕にとってつまらなかったのかもしれない。
友達との会話が盛り上がり、かなり長い時間いたようだ。
ハッと気づいてトイレを出た。

シャワーを浴びる前に寝てしまったので、時間がないのにシャワーを浴びた。                                夢に着けられた首輪もここで外せると思った。             雪国から越してきた僕でも冬の朝の寒さには堪えるのは難しかった。
「さっむ」                             無機質なユニットバスに響く。                    温かいお湯で冷えた体を濡らした。                  身体はシャワーを浴びている。                    頭は今朝見た幻を思い出していた。

スクリーンに映像が映し出されているセピア色の部屋へ戻った。
扉を開くと観ていた人が一斉に僕の方へ顔を向けた。
恥ずかしくなったが、ある人以外は再びスクリーンに顔を向けた。
僕の隣に座っていた高校生の頃に別れた彼女は、僕が席に座るまで見続けていた。                               「どうしたの?」                          そう聞くから僕は「トイレへ行ってた」と一言。
「そうかと思った。香水の匂いが少し強くなったから」
映画が好きな彼女だったから映画中は喋らないと思っていた。
この映画を観たいと言ったのはどちらか分からないが、自分だったら申し訳ないと思った。                          「大人っぽくなったよね」                      映画が終わった後で良かったのに。                  まるで夢の終わりを知っているかのようだった。
「まあね」と照れ隠しで言った。                  「大学生で頑張っているもんね」                   この言葉がざらっとした。                      自分自身頑張っていると思わなかったからだ。             そこで夢だと気付いた。                      「ああ、夢だったんだ」悲しくなった。                やっと会えたと思ってたのに。

夢でも会えただけ嬉しかった。                    心地が良かった。                          結局シャワーを浴びても首輪は取れなかった。             それでも時間は平等に過ぎていく。                  僕は急いで家のドアを閉めた。

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