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選択科目に知的財産法はどうですか?

選択科目選びで悩んでる方を多々見かけるので、選択科目としての知財でどういうことを学ぶのか、試験対策としての知財の対策方法を書けたらなと思います。

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興味はあっても、知財の暗記量の多さや他科目とは異なる思考方法に二の足を踏む方は多いかと思うので、そのような方の判断材料となれば幸いです。


知財とは

知財とは、知的財産法の略称で、司法試験科目としては特許法と著作権法で構成されています。特許法とは発明を保護する法律で、青色発光ダイオードについての特許もあれば、切り餅の切り込みの入れ方に関する特許もあり、イメージにはないかもしれませんが、世の中には幅広く存在します(今あげた具体例は全て百選に出てくるものです)。一方、著作権法とは創作を保護する法律で、これはイメージしやすい方が多いかと思いますが、PCのワードの字体から、映画やCMに至るまで、イメージする創作物はだいたい著作権法で保護されうるものとなります。

特許法の概要

特許法で学ぶことは以下の通りです。

・発明の種類
・クレーム(特許を構成する要件のことで、クレームによってその特許がどのような発明に関する特許なのかを知ることができます。)の種類
・特許権侵害の種類
・特許権侵害行為等に対する救済手段(差止請求等)
・特許権侵害に対する抗弁
・約定実施権(特許権者が他の者に特許権に係る発明の実施を許諾した場合に認められる権利)について

一番つまづきやすいと思うところとしては、抗弁のところです。どの場面でどの抗弁が使えるのかというのが、単に過去問を解いているうちに身につくというわけでもなく、基本書を読みながら特許出願の手続のイメージをもって考えていく必要があり、単なる暗記ではなく理解が求められることが多いのが特許法の特徴です。

著作権法の概要

著作権法の概要は以下の通りです。条文の整理がしやすいというのが個人的な印象です。

・著作物の種類
・著作権侵害行為の種類
・侵害主体
・権利行使の制限(いわゆる抗弁)

ざっくりいうと、著作権法は、

創作行為等の特定→著作物性検討→侵害行為特定→侵害主体特定→請求内容特定→請求相手方による抗弁検討

がほぼ全てです。特許法に比べて分かりやすい!と思うんじゃないでしょうか。

一方で、著作権法が厄介なのが、誰が著作権者なのかという論点です。
例えば、映画の著作物(これも厄介で、映像系の著作物は全て映画の著作物に含まれます。ゲームもそうです。)だと、著作者に関する規定、著作権の帰属先の規定が複数あるので、それぞれの場面でどの規定を使うのかを考えないといけません。特許法よりも、知識<ケースごとの応用力を見られている感じがします。

使用した参考書

使った基本書についてはこちらに記載している通りです。

・著作権法入門第3版(一部第2版より引用)
・特許法入門
・標準特許法第7版
・知的財産法演習ノート第4版
・司法試験過去問(H18〜R2)
・2021年TKC模試

僕は答案例等を持っていなかったので、答案の書き方のついては演習ノートで勉強していました。答案例があるのなら過去問だけでも十分かと思います。

基本書は、だいたい標準シリーズか入門シリーズのどちらかかとは思うんですが、僕は文章の書き方が入門シリーズの方が好きだったので、そちらをメインに使用していました。

試験対策について

過去問を解くことが最重要になります。年度が古いものは難易度も低いのでまずはH18〜H25あたりをとりあえず基本書を読みながら、論証集をチェックしながらでいいので確認してみるのがいいです。解いてみると、何度も同じ分野が出題されていることがよくわかるかと思います。

次に重要なのが百選です。演習書や基本書の多読に手を出す前に百選を必ず潰してください。
知財の対策で大変なのは、特許法と著作権法の2冊分の百選を潰さないといけないところかと思います。どの判例を潰して、どの判例を放置するかは過去問を解きながら感覚でわかってくるかと思うので、過去問と同時並行で進めていくのをお勧めします。
あと、特に著作権法に関してなのですが、百選を読むときは必ず事例と一緒に覚えてください。これだけはマジで守ってほしいです。司法試験では百選掲載の事例と似たような事案で出題し、誘導してきます。また、事案を少し変えることで判例の射程から外してくることもあります。判例を意識した答案であることを見せるためにも、規範だけでなく事例も覚えるべきです。

対して、特許法は、百選もそうですが、それと同じくらい大事なのが手続の流れです。特許法には特許無効審判など、特許庁の判断に異議を唱える行政訴訟も存在するので、このような訴訟が提起された場合にはどうすればいいかというのも一つ一つ確認していく必要があります。基本書を読むときには読み飛ばさず、フローチャート等で整理していくのをお勧めします。

選択科目としての知財のメリット

・文言の暗記量がそこまで多くない。
手続の流れや百選の事案など、暗記量自体が少ないとは言い難いんですが、規範のようなものがほとんどないので、定型の文言を暗記しないといけないといった負担はほとんどありません。

・学説の暗記は不要
学説自体は存在するんですが、試験対策という面では学説により結論が分かれるものはこれまで出題されたことはありません。また、百選の結論を批判する形での論述を求められるようなものも出題されたことはありません。なので、試験対策という意味では学説を覚える必要はなく、判例の理解を追えばそれで問題ありません。

・ネットの解説記事や基本書が豊富
一番多いとは言いませんが、比較的ネットの解説記事や基本書が多いので、わからないなと思った内容でも、探せば答えが見つかります。比較的独学に向いている科目でもあるかと思います。

反省点

・過去問を解くのが遅かった

自分の反省点としては、選択科目ということもあり、全くの初学者であることにビビって基本書を通読してから過去問に取り組み始めた点です。結果、本来重点的に読むべき箇所を軽くしか読んでいなかったために、再度基本書を読む時間を確保する羽目になりました。

・百選をまとめたものが欲しかった

過去問には、「え、この事案でこの条文使うとか思いつく?」みたいな問題があるんですけど、判例を見てみると、まさにそのような事案でその条文を使っていたりします。また、むちゃくちゃマイナーな判例なのに、それを知らないと解けない問題も出たことがあります。そのため、百選はマストで通読すべきなのですが、これがむちゃくちゃ大変、、、
僕は、百選を通読すべきということに3月になってから気づいたので、メンタルがボロボロになりながら百選をまとめていました。
当時は予備校ではAGが知財の論証を出していたそうですが、それでも判例への網羅性はなかったと友人から聞いています。なので、判例を網羅している論証があれば楽だったのになあ、、、と思います。

知財を選んでみたら?

知財は日常で多く触れることのある法律の一つかと思います。
実際、僕は今、企業の法務部でインターンをさせてもらっていますが、知的財産法の知識が役に立った場面が何度かあります。パクリ問題や、フェイクニュース、漫画村、ファスト映画など、話題のニュースにも知的財産法が関わる場面は多々あるので、機会があれば学ぶのをお勧めしたい法律です。

もし、知財を選ぼうという方は、実際に僕が百選の網羅性を重視して作成した論証集を検討していただけると嬉しいです。受験生の時に作成したものを、改めて、他の方にも使いやすいように、分かりやすく修正したものになります。
予備校の論証に不十分さを感じている方、独学やローの授業のみで対応予定の方にぜひ使っていただきたいと思っています。
下記URLから飛んでみていただけると嬉しいです。


最後までお読みいただきありがとうございました。
参考になれば幸いです!知財選択増えてほしい!


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