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【レビュー】Interstate 38 - 38 Spesh

つい先日Dropされた、リバイバル企画モノのMixtape「1995」から間髪入れずに、12/25のクリスマスに放たれたソロEP。常に動きは止めずに今年も駆け抜けてきたものの、飛び抜けたニュースが無かったSpeshですが、年末の"TRUST MOVEMENT"の大トリを飾るこの一枚は個人的にリコメンドしたく、一筆させて頂きました。

38 Speshの2020年

今年のSpeshの純粋なソロ名義リリースは、「6 Shots」含めて3作。

「6 Shots」に関しては、「5 Shots」の続編的な位置付けで、1ヴァースキルなコンセプトになっているため、作品としては割と企画モノに近いといったところ。

セルフプロダクションのビートに関しては、暗めで単調なループが中心で、前作と比較すると印象が少し薄まり、客演はRansom、Etoのみのシンプルな布陣。前作もビートは単調気味ながらも、バランスの取れた構成が聴き手を飽きさせなかった感がありました。

オリジナルの「Flour City」はビートもMVもローカルNY味あふれ、称賛を込めた意味での"いなたい"出来栄えだっただけに、続編への期待値が高くなりすぎた感もあったかなと。

「6 Shots」~「1995」の他には、Che Noir、Planet Asia、Rasheed Chappell、Flee Lord、Chase Fetti、Street Justice、Elcaminoらとのフルプロデュース作品や客演仕事もこなし、裏方業にも心血注いできたSpeshですが、どれももう一息パンチが欲しいものが多かったのも正直なところです。

2019年作の「38 Strategies Of Raw」や「The Trust Tape 3」「Loyalty&Trust」等でみせた楽曲と比較すると、トラック全体のトーンを落とし、ローテンポで暗めなビートが多く、以前のカラーとは趣きが異なることがわかります。

実業家色の強いアーティストのSpeshだからこそ、「段階的かつ実験的に色々な作風やビートアプローチを試している」とも理解できるところはありますが・・・個人的には、2020年はおそらくプロデューサー(裏方)としての手腕も磨きつつ、テストマーケティング的な意味でのスタイルの多様性を見せたかったのでは?とも思ったり。そう考えると、2019年を締め括った「Army Of Trust」からの流れが腑に落ちてくる、といったところです。

自身の看板である、「TRUST(TCF Music Group)」もTRUST GANGという(構成人数が定かではない)大枠がありつつも今年はおそらく、38 Spesh、Ransom、Che Noirの3人がメインアクト(一軍)として定義され、来年もこの流れは続くのではないかと思われます。

Interstate 38について

前置きが長くなりましたが、2020年の集大成である「Interstate 38」についての主観的な感想ですが、今年最後のSpeshソロ作品ということで、期待&楽しみしていたこともあり作品丸ごと紹介したいと思います。

まず、この作品のクレジットを見た時点で・・・

☞外注プロデューサーが多い(しかも好きどころ多数)
☞Trust Tape辺りを彷彿させる、安心感のある客演陣
☞リードシングルの「Stash Box feat.Benny The Butcher」を聴いた直感

この辺りから察するに、今年のセルフプロ中心の作品群とはまた一味違った"魅せ方"でくるのではないかという期待を寄せていました。

では、せっかくなので1曲ずつリコメンドしていきます!

Streetrunnerのメロディアスで壮大なイントロ、"I-38"から始まる本作は、この時点で期待度十分。38 Speshの得意とする圧巻のSpit Rapで開幕!

続く"Interstate"では、客演に妹分のChe Noirを迎え、西海岸風な自作のオールドタイプなビートで、タイトなヴァースチェイスをカマしています。この2人の阿吽の掛け合いももはや定番となってきました。

3曲目の"Toll Booth"は、ザ・Spesh's Beatって感じの無骨なドラムの重厚ブーンパップの上を、Ransomと駆け抜けていく激シブシットです。締めのKlass Murdaの厳つくもメロウなフックがまた最高のスパイスを添えています。

既にリード曲にもなっていた"Stash Box"も、この作品のPieceとしてきれいにハマった事で完成形となった感があります。今年は最高の活躍と波乱のハスラーライフを見せてくれた盟友Bennyとは、"Rhyme In Partner"として当然ともいえる抜群の相性。

中盤の"Route 38"では、大御所Buckwild(!)の手掛けるソウルフルで骨太なビートが最高のグルーヴ感を演出しています。GriseldaメンツやSpesh作品でも常連の坊や、Elcaminoによる神がかった歌モノフックも相まって、本作中でもかなり推しの一曲!

ここからは作品後半戦で、しっかりとトラックの雰囲気やテンポも徐々に落としてきます。

折り返しの"Road Back"では、毎度間違いないサンプリングセンスで聴かせる、Tricky Trippzによるスロービートで、大振りなソロSpitをカマしてくれます。

ソロ曲、"Investment Pieces"は、The Heat Makerzプロデュース。Heat Makerzらしさを感じる、メロウな旋律と強めのキック、秀逸な"抜き"のバランスと神秘感も感じるビートで一息。

"Money Calling"は、過去にソングライトでグラミー賞ノミネートの経験もあるClemm Rishad(多分、Streetrunnerの采配)と共演。これまたStreetrunnerらしい、派手めのスロービート。ClemmのRapは多分初めてちゃんと聴いたけど、Meekぽい声質かな。(Meekとも仕事しています)

"The Mule"(おそらく、運び屋という意味)では、ジョージアのプロデューサー、Rome On The Beatのトラックで、Diniのアディクトヴォーカルの効いた歌モノフックとKlass Murdaの歌混じりな野太いRapで現行風な出来栄え。

"Under The Table"は、Speshの上ネタのみのドラムレスビートで、ヴァースのみ淡々とRapしています。(Interludeみたいな扱いかな)

ラストソング、"Made it Home"では、本作の核となったStreetrunnerで締め括ります。哀愁も感じるしっとりとした静かめなビートで、Speshらしい感情のこもったSpitを披露した締めに相応しい一曲。

本作の評価は、今年のTRUST作品の中でも文句無しの最高評価を付けたいです。(Che Noir × Apollo Brown、Ransom × Nicholas Cravenとかも素晴らしかったけど)

やはり、メジャープロデューサーである、Streetrunnerが本作の軸をしっかりと築いてくれた部分が要因の一つであると感じます。特に、2000年代Hip Hopが好きなリスナーのツボを刺激してくれるクオリティである事を保証します。

Speshの拳の入った、唾の飛んできそうなほど迫力のあるSpitを引き立てるには、多彩な幅のあるトラックの存在が欠かせないと思っています。ダーク一辺倒のスタイルよりも、圧倒的にオーセンティックでハイファイなブーンバップの似合う彼には、是非この路線を主軸として注目を受けて欲しいです。

UPSTATE、TRUST好きの筆者としては、来年の新たな試みや新境地を心待ちにしたいと思います。そして、Bennyの"Burden of Proof"を少なからず意識してこのノリで作ったと思ってるし、来年こそ、Stabbed&Shot2期待してるよ!TRUST!!

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