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Dare#1「生ける亡霊」|Big Ghost Ltdについて

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素性を明かさない匿名のアーティストとして、スーパーマリオのテレサのサンプリングロゴが印象的なBig Ghost Ltd。元々は匿名のブロガーだったBig Ghostですが、2011年にDrakeを辛辣に批判した記事を書いた事を発端に、その後も様々な有名アーティストに対して批判的なスタンスを取ってきました。
要は、Hip Hop愛が強すぎたゆえに、信念にそぐわないFake Ass認定したアーティストを叩きまくったって事ですね!w

Big Ghost Ltd=Ghostface Killah説!?

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Big Ghostはそのハンドルネームや言動から、実は「Wu Tang ClanGhostface Killahじゃないの?」という噂が立っていた時期もあるんですが、ある時、"10 Softest Rappers In The Game(Hip Hopゲームにおいて、ヤワなラッパーTOP 10)"と冠した記事を書いて、そこにWiz KhalifaやらKid CudiやらBig Seanやら当然Drakeも含め(この記事を読めば、いかに彼がDrakeの事が大好きかわかりますw)、ズッタズタにDisり散らしました。
その記事が要は、今で言う"バズっちゃった"ってやつですね。それにはWizも勘違いしちゃって、当然ガンギレしたのが当の被害者GFK、その人だったわけです。
GFKは、Big Ghostを徹底的に攻撃して、ブログを閉鎖にまで追い込んで、自分が当人では無い事を業界内外にアピールしたんです。

音楽プロデューサーとしてのBig Ghost Ltd

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しかしながら、Big Ghostの愛ゆえの痛烈なDisや風刺って実は、Hip Hop界隈ではよく巻き起こる"Real・Fake論争"の核心を突くようなものだったんで、賛同者も大勢いたわけですね。結局、GFKも理解を示して、あの"凶作"が生まれたわけです。
余談はこの辺で、Big Ghostは実は音楽プロデューサーとしてもアングラ界隈では近年名を馳せてきています。俺自身も、Big Ghostのプロダクションには相当に食らった1人です。
Big Ghostのトラックは主に、ネタ物サンプリングで、オーセンティックな東海岸スタイルの重たいBoombapが中心となっています。

Big Ghost Ltdのプロデューサーとしてのキャリア

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2015年からプロデューサーとしての頭角を現し始めたんですが、デビュー作とも言える、"Griselda Ghost"がめちゃくちゃにヤバイ。
この頃から、アングラマニアの間では水面下で噂になっていた、デビュー前のHall N Nash(Westside Gunn&Conway The Machine)と共同制作した本作は、俺もGriseldaとしてはほぼ初めて知った作品でした。
WSGからGriseldaに出会って、あの独特なダークかつLo-Fiなサンプリングサウンドに食らっていた同時期に、Big Ghostのサウンドにも出会ったわけです。特に、アルバム4曲目の"Fendi Seats"は、くそヤバい!(本人も本作1番のお気に入りらしい)Queensサウンド味も感じる、透明感のある声入りの上ネタとブッといドラムの上で、Buffaloの奇才コンビがスピットするサマは当時マジでフレッシュでした。
その後もVic SpencerとのThe Ghost of living(2016)(神アルバム!)やHus Kingpin、Crimeapple、Ankhlejohn...と続々コラボ作品が続いて、遂にGFKのオデマシって感じです!
かつては、バチバチの関係だった2人の凶作(共作)が、蓋を開けたらゴリゴリのWu Tangサウンドだったってハナシです。
そう、Big Ghostの1番のヤバさは、そのリアルHip Hopに対する半端ない愛情と圧倒的なリサーチ力、アーティストに対する最大限の敬意が生み出す、三位一体のビートプロダクションなんです!(個人の意見ですw)
誰と組んでもそのラッパーの本領を120%で発揮させる究極のプロデュース力。それ以外のナニモノでもないのです。絶対的に信頼して針を落とせる、そうゆうヤバさなんです。(B-Boyなら分かって頂けるでしょう)これには、GFKも認めざるを得なかったって感じでしょうね。

ネット世代の副産物、Big Ghost Ltd

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とにかく、ネタ選びのセンスから、チョップの的確さ、ベースやドラムのゴツさ、上ネタの展開まで全てがヤバいんです。
そんな彼は名に違わず、未だにオフラインには一切姿形を現さず、国籍、人種、性別も人数も真偽は定かにせず、ネット上に"生ける亡霊"として存在しています。ただただ、ひたすらに良質なコラボ作品を好きモノなリスナーに供給し続けてくれています。
リリースしたリミテッドのVinylやCD、洋服は軒並み秒殺完売という沸騰ぶり。実にミステリアスな存在でたまりません。まさに、インターネット世代だからこそ実現しているコラボの数々とも言えます。

【リコメンド】Big Ghost Ltd作品

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最後に、俺的Big Ghost作品のおすすめを紹介します。(本当は全部ヤベーんだけどね・・・)一文、拙いコメントを添えて。

Carpe Noctem - Carpe Noctem(2020)

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Big Ghost 2020年1作目にして、最高傑作と呼べる、自身の主導で作り上げた渾身の一枚。これはいわゆるコンピではなく、1個のクルーとして位置付けしてるっぽい。(だから厳密にソロ作品ではない)
東海岸のヤングガンズを集めた、タフでハードコアな一流のアンダーグラウンドサウンドは是非一度聴いてみて欲しい。
ハイライトは、Gladiator SchoolとClyde Frazier Minksかな。最近じゃ少なくなった、大所帯による極上のマイクリレーは圧巻です。


38 Spesh - A Bullet For Every Heathen(2019)

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Upstate New Yorkを中心に巻き起こしている一大ムーヴメントは、Griseldaのみならず、この"38 Spesh"という漢抜きでは語れない。Rochesterを拠点として、勢力を増している"TRUST"の代表格。
この作品は、そんなSpeshの卓越したRapスキルと見事にシンクロした、ハードコアサウンドの奏でる暴力的なまでの芸術作品。Speshの作品の中でもかなり気に入ってる一枚。全曲必聴。


Hus KingPin - Cocaine Beach(2017)

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ハスキンとBig Ghostの相性の良さも言うまでもないですが、このアルバムを聴いてた当初はハスキン自体も知ってはいたけどそこまで意識して(好き好んでは)聴いてなかったんですよねー。
すっかりWAVOブランドも確立してますが、ハスキンといえばこのアルバムが浮かぶくらいインパクトの強い作品。
余談になりますが、Waves R Usって別作品に入ってる、"Serotonin High Remix"(セルフリミックス)が超たまんない。ただでさえ原曲もたまんね~つうのにさ。


Ghostface Killah - The Lost Tapes(2018)

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本当はまだまだ紹介したいくらいに悩んだけど、やっぱり最後はこれだけは聴いて欲しいってことで、GFKとBGLの噂のコラボ作品。
Big GhostがGFKやWu Tangをどれだけ理解してて、愛して止まないかはこれを聴けば絶対にわかるはず。
イントロ通り過ごして、2曲目からぶっ飛ばされる事は確実。アルバム単位を通しで聴けるってこういうことな、な一枚。

11月には、HarlemのUFO Fevってイケてるラッパーとコラボ作品も控えてるからマストでチェックですよ!Nemsとの曲の先行MVもドハーコーやね。

UFO Fev - The Ghost of Albizu(11/6/2020)

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