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Ami Ⅱ 第8章-洞窟①

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エレベーターを降りて次の廊下を歩いていると、勝手に扉が開き、来訪船が停まっている広々とした場所に入ったのです。
そして、僕たちはブラクの宇宙船まで歩いて行きました。
それは巨大で、3本の脚で停船していて、窓が何列もあり、ガラスの向こうに何人かの人影が見えたのです。
入り口は、その『UFO』の胴体の下にありました。
とてつもない仕掛けの下をくぐっていくのです。
ビンカと僕は、畏敬の念を抱いて見上げていました。
僕たちがリフトのところに到着し、最初に足を踏み入れたのは船長でした。
すると、リフトは電動式のもののように動き始めました。
僕たちが全員それに乗ると、直ぐにかなりの速度になりましたが、『UFO』の内部に到達する前に、緩やかに減速したのです。
ブラクが「地質保全の作業はここから指示されます。」と教えてくれました。
様々なタイプの人間が何人も行き交う部屋に入ると、誰も何も喋っていないのです。
ほとんど会話がないことに驚きました。
次のリフトに乗ってから、アミは、僕の思いを読んで、笑いながら言いました。
「あなたの世界ではよくあることですが、心のコントロールが身についていないと、あなたの頭は雑多な、混乱したアイデアをつなぎ合わせる機械になり、一瞬の沈黙もなく、周りに人がいれば話し、人がいない時さえ時々話しをするのです。
まれに価値のあることが話されることもありますが。
ここの人々は、自分の思考や感情をよりよくコントロールできるため、現実をよりよく認識し、テレパシーを発達させています。
見た目にはわからないかもしれませんが、必要なときには、かなりコミュニケーションをとっているのです。」
「でも、君は彼らと違うよね。」
と僕は言いました。
「どういう意味ですか?」
「だってアミは、僕たちと同じようによく喋るし、よく笑うよね。
しかもここにいる人達は、もっと穏やかな表情をしている気がするんだ。」
アミはその言葉に萎えるどころか、大きな声で笑い、ブラクを和ませました。
するとアミが「先ず、私は彼らに追いつく必要があります。
お二人のうちどちらがテレパシーで会話しているのでしょうか?」
と言い出したのです。
「次に、私の進化レベルがあなたと非常に似ていることは、すでにお話したとおりです。
3つ目は、私は、魂がゲームを好む世界から来たということです。
私たちは、一種のいたずら好きな小さな精霊で、意識的に、すべてコントロールされていて、逆に有害ないたずらをすることはありません。
ゲームのように教えると、レッスンが最も効率よく消化されることがあるのです。」
「どんなレッスンなの?」
「まあ、自分たちの世界では、よく知られていないことを知ってもらうということでしょうか。」
「なぜ、アミより進化した人ではなく、アミが教えるの?」
と、ビンカは驚いたような口調で訊きました。
後で気がついたのですが、彼女も無意識にアミを少し見下していたようでした。
しかし、またしてもアミは笑っていました。
ブラクは、リフトが目的地に到着するまでの間、マニュアルを見ていて、僕たちをあまり気に留めていないように見えました。
が、彼の唇にはかすかな笑みが浮かんでいたような気もしたのです。
「例えば司令官のお兄さんとか?」
アミは、ビンカの発言に面食らった顔をしましたが、ビンカは目を輝かせて「ねえ。どうしてなの」と真剣なまなざしで聞きました。
今度はブラクが書類を脇に置き、少し驚きながら率直な笑顔で少女を見つめ返したのです。
アミは、またしても苦笑いを漏らしました。
ブラク心を落ち着かせ「そういう人の指導を受けるには、司令官ほどの内面や進化のレベルが必要なんですよ。」と言ったのです。
「そういうことなのね。
わかったわ。
それなら、あの素晴らしい司令官のような人が、私達のガイドになればいいんじゃない?」
とビンカが再び尋ねました。
アミはその会話を楽しみながら、口元に笑みを浮かべ、こう言いました。
「彼の存在に安心感を覚えたましか?
彼の言葉をよく理解できましたか?
それとも私の方が理解できましたか?」
ビンカはドヤ顔でこう答えたのです。
「私は、彼の言葉をとてもよく理解したし、隣にいると天国にいるような気がしたの。
あなたは、私たちとあまりにも似すぎていてるような気がするんだもの。」
「それでは、彼の言葉をよく理解できたのですね?
彼は何と言いましたか?」
アミの視線はいたずらっぽい様子でした。
「まあ、天国に行くには善良でなければならないとか...そんな感じだよね。」と僕。
笑いながら、白い服を着た少年は僕にこう尋ねました。
「司令官がそう言ったんですか?」
「そうだよ、それと、世の終わりが来るけど、僕たちが善良であれば、救ってくださるということもね。」
ブラクは書類を置いて、父性的な優しさで僕たちの頭を撫でました。
するとアミは言いました。
「ほら、こうなるのです。
彼の言葉の千分の一を拾って、全部歪めてしまうのです。
エネルギーが非常に大きいときは、変圧器が必要です。
テレビを高圧線に直接つなぐと溶けてしまうのと同じです。
テレビはその電力用に作られていないので、変圧器で電気を受信機が扱えるレベルまで下げる必要があるのです。
司令官の精神レベルが高すぎて、説明してもよくわからないのです。
でも私が同じことを説明すると、あなたに近いからこそ、より明確に理解することができるのです。
まるで、より近い言語を話しているかのようなものです。
あなたは今、別の本を書かなければなりません。
今、あなたが経験している全てのことを伝える本です。
しかし、あなたは司令官が話したことをよく覚えていないので、あなたが書いているとき、私はテレパシーであなたと交信し、あなたの記憶と理解を活性化するでしょう。」


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