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ファクターX〜命題(1) 今回のコロナウイルスパンデミックは、 医学と一般の人間との関係を確実に変える

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コロナ危機は、決して世代や民族、貧富、公民の対立ではない。この国の「戦う者」と「おめでたい者」との対立である。




命題(1)
今回のコロナウイルスパンデミックは、                                               医学と一般の人間との関係を確実に変える。



日本の致死率の低さは一体何なのか?海外における抗体検査の数字から推定される数字は、この国の現在における感染者数において、おそらく数十万人、ひょっとすると数百万人規模で存在するかも知れない。

ドイツの致死率の低いのは、ドイツ政府が有能であるからだが、無策無能の政府を持つ、日本の致死率がなぜこんなに低いのか?

日本社会の特徴として、高齢者のみの世帯で生活している率が高いをはじめ、公衆衛生の概念が浸透しているとか、手洗いの習慣、マスク着用など生活様式の特徴も理由にあげられる。漠然と説得力を感じる物語だが、そうした社会の特徴だけで説明できるとは思えない。ましてや、感染経路の見えない多数の感染者が発生している現状、クラスタ対策による封じ込めが成功しているようには到底思えない。


日本人は新型コロナの免疫をもっている?


日本人の新型ウイルス感染者の致死率が、何故こんなに低いのかと考える時に様々な仮説が成立する。一つは、欧米に入ったウイルスと日本に入ったウイルスは別物ではないかという仮説である。新型が注目されたのは武漢で起こった感染爆発のためだが、これは強毒性のL型(ロイシン)コロナウイルスで、日本には弱毒性のS型(セリン)が入ったのではないかと指摘する専門家もいる。

また、別のファクター要因として考えられるのは、従来型のコロナウイルスは風邪の原因の20%を占めるありふれたウイルスで、中国から毎年いろんなコロナウイルスが日本に入ってきており、日本人が(従来型)コロナウイルスに感染してすでに何らかの免疫をもっていることである。

日本人の腸内細菌は、食物繊維などを食べて「酪酸」など“免疫力をコントロールするような物質”を出す能力が、他の国の人の腸内細菌よりずば抜けて高いと言われている。つまり私たち日本人の腸には、「鉄壁の免疫力」を生み出す潜在能力が、誰にでも受け継がれていると考えられる。私たちの腸管には「免疫」の働きを担う細胞や、侵入者と直接戦うたんぱく質である抗体免疫グロブリンA(IgA)の数や量はからだ全体の60%以上が存在しているのである。

その他にも、L型とS型の遺伝子配列の違いはアミノ酸1個だけだが、L型は武漢で分離株の96%を占め、その変異したS型は武漢以外で38%を占めたという。ここから弱毒性のS型が早い時期に日本に入って免疫ができ、症状の強いL型が免疫のない欧米に入ったという推測も成り立つ。

そして、最近有力視されているのは、日本人がBCG接種でコロナに対する免疫をもっているという考え方である。

総じていえるのは、なんらかの原因で日本人の一部がコロナウイルスに対する抵抗力をもっている可能性が強いということだ。日本で致死率の低いのは、おそらく多くの場合、例え感染しても、「獲得免疫」である抗体がすでに出来ているという考え方と同時に「獲得免疫」が動く前に、「自然免疫」が働いて、「獲得免疫」が動かないままウイルスを追い出してしまっている人が、かなりいるのではないかと考えるのが合理的である。

そうでなければ、この致死率の低さを合理的に説明することは出来ない。パラドキシカルに言えば、そのファクター要因が一体何なのかを証明が出来れば、この未知のウイルスとの戦いに勝利することが出来るかも知れないのである。

最近、世界中で注目を浴びつつあるのが抗体測定法である。新型コロナウイルス感染が生じると感染者の体内でウイルスに対する抗体ができてくるのでかなり有力な診断法となる可能性がある。感染後、数日でIgM抗体を生じ、かなりの時間が経ってから中和抗体であるIgGが生成され、感染は終結に向かう。したがって新型コロナウイルスに対するIgM抗体を測定することにより、感染が現在生じているのかどうかが明らかとなり、IgG抗体が陽性であれば、すでに感染を克服している可能性が高いことがわかる。そのためには、現状のIgM抗体の測定精度を高めることが重要になってくる。

また、集団免疫とワクチンや抗体、治療薬の完成が感染拡大の収まる時だとされるが、そのワクチンや抗体に対する過大な期待は禁物である。



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単球という自然免疫細胞に働いて、マクロファージを分化させる、
エピジェネティックな変化を起こし、
単球の生体機能を高めるファクターが一体何なのか?



BCGワクチンによる新型コロナウイルス感染予防の効果についての治験がオランダナイメーヘン大学のグループが中心になって行われており、オランダではBCG接種が進行中である。もともとBCGで免疫を変化させ、結核だけでなく、ガンや感染症を抑制しようとする試みは大阪大学を中心にわが国で活発に行われていた。現在は自然免疫の概念が確立しBCGのような複雑な刺激ではなく、より洗練された自然免疫刺激分子の研究へと移っている。

オランダのグループはBCGにこだわっており、その意味で刺激自体を分析することにこだわらない。つまり、BCGは直接IL-1βを誘導するが、これが血液幹細胞に作用してエピジェネティックスを再プログラムし、さらにIL-1βなど重要なサイトカインが出やすい体質に変え、これがウイルス抑制効果につながるというシナリオである。

重要なのは、この問題の主題が、この研究においてBCGが血液のエピジェネティックを変化させるという仮説を「人間」で確かめることが目的になっていることである。それは、すさまじい勢いで様々な可能性が提案され、研究から臨床への時間差もほとんどないことを知って、今回のコロナウイルスパンデミックが、医学と一般の人間との関係を確実に変えるという実感である。

マウスと人間は、神経の配線の仕方や脳のでき方、神経細胞の機能はほとんど共通している。したがって、神経細胞レベルでの異常や、発達の過程での異常をマウスで明らかにすることができれば、人ではわからないような知見を得ることができるというのが、実験動物を使う重要なポイントである。

ヒトの正常な大腸粘膜から培養した組織幹細胞をマウス腸管内へ移植後、マウス生体内で生着させ、ヒト正常大腸上皮細胞動態を長期間にわたって観察することは可能である。

だが、人間の腸には「意識」が存在する。ヒトの腸の「意識」まで、マウスに移植することはできない。腸は人間にとって第二の脳なのである。

マウスよりも人間の方が、研究から臨床への時間差もほとんどない、そして、食物は、薬とは違い副作用による健康被害も発生しない。だからこそ、食物由来の臨床は、ヒトの腸で行うべきなのである。

僕たちは、食物由来により強化された免疫を、仮にtrained immunityトレーニング・イミュニティ「訓練免疫」と呼ぶことにする。

ウイルスとの「非対称戦争」おいて、優位に立つのは、決して「知識」の側ではなく、あくまで「物語」を支配する側である。僕たちは、因果律による硬直的な思考法によるアプローチは行わない。社会のなかには、虚構=フィクションによってしか解決できないことがあり、僕たちは、人間の生命力という存在を心から信じている。僕たちにとっての虚構とは、「自然免疫」も訓練で強化できると考える「物語」(仮説)である。

食物によるアプローチは非常にシンプルではあるが、その効果はみなが想像するよりも絶大である。つまり、感染しようがしまいが、人間には「自然免疫」が存在する。集団免疫の考えの根底にある“新しい病原体には人々はまったく抵抗性がない=免疫がない、しかし感染によって免疫が成立する”という論理の秩序を根本的に転換する必要があるのかも知れないのである。


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