新米班長いとう君 第二話 「しれんは続く」
あらすじ
結局、彼女との待合せをすっぽかしてしまい、今日は、昨日の対応で、朝早くから現場の各課長へ作業予定を提示して回ります。
現場で進捗の確認、現物の確認を行っているさなか再度設計変更が発生。また計画の作り直しです。
何時までもこのままの仕事のやり方では、いけないと思い、先ずは、生産管理の基礎を学ぼうと思案を巡らします。
#2 しれんは続く
昨日のどたばたから、結局深夜までの作業になり、しかも彼女には、
「いつも約束守れないじゃない。そんな仕事あるの?ほんとは仕事じゃないんじゃないの」
と言われ、疲れていたので、反論もせずに、謝り続けました。
朝起きたら、もうちょっとちゃんと説明すればよかったな。と思いましたが、
昨日作成した作業予定表が、かなりの予定変更を余儀なくされ、納期余裕があったオーダも、ぎりぎりの状態です。
これをまた現場の課長に見せて、こんな予定で大丈夫か?こんな予定できるのか?
などと、攻撃される姿が脳裏に浮かび、今朝は、始業時間前に出社し、工場内の現場主任の机に、先に、昨日作り直した作業予定表を置いてまわる予定です。
朝、守衛さんに、
「伊藤君、今日は早いねー、またトラブル?」 と言われ、「いいえ、O社の仕様変更対応です。現場の課長さんがうるさいので、 怒られる前に、今日は先に予定表を机の上に置いてまわろうと思ってます」 とつげ、「あそこは大変だからなー、でもがんばれよ!」と励まされ、 ちょっと気を取り直し、昨日印刷した作業予定表を班長の机に置いてまわります。 一巡して、だれもいない現場事務所の自販機で缶コーヒーを買い、ちょっと休憩です。
時計は7時45分。
そろそろ作業者が出勤してくるはずです。
試験課の課長が来ました。
佐藤さん
おー、伊藤、早いなー、予定できたのか
いとう
はい、机の上に
佐藤さん
そうか、俺より早く来るとは、だんだん仕事がわかってきたな
いとう
はい
佐藤さん
ところで、若いんだから、いつまでも現場を歩いて作業の進捗の確認なんてしないで、頭使って便利な道具作れよ。
俺は、若いときに、そこの黒板に、予定を書いて、現場の班長に仕掛かったら、斜線を書いてもらって、 完了したら塗りつぶしてもらってたんだけどな、 まー、あのころは、今の数倍の時間かけてもの作ってたからなー、それにこんなに部品無かったしなー こー、ものが複雑になってきたら、現場も今日やった作業を黒板の一覧から探して、 塗りつぶしていくなんてことお願いしたら、 怒るだろうな!。まー俺だったらやらないな。さて、予定見るか。
とちょっと機嫌がいいみたいだ。 自分の机にもどり、昨日朝書きかけだった、新人教育用の作業要領書を書き始めました。
そこに、また試験課の課長が、怪訝そうな顔をして現れ、手には私が作成した作業予定表を持っています。
佐藤さん
課長よ、この伊藤君が作った予定だと、納期ぎりぎりのものがあるし、 すぐに仕掛からなくてもよさそうな、納期のものを先につくることになるけど、 だけど、俺だったら、こっちを先にやるけどな。なんせ工期が長いので、余裕を持って作業したいし、 こっちの小さいのは、ぎりぎりに作っても間に合うので。どうする?
と試験課の課長は、私の方を見ずに話をしているが、いままでそんなこと教えてくれなかったのに。 と思い。
鈴木さん
そうかー、わかりました、すぐ作り直します。
よし、伊藤君やってくれ、すぐに直しますので、その間の作業はお任せしていいですか。
佐藤さん
わかった、たのむよ。
とちらっと私の顔を見て、試験課の課長は、事務所を出て行きました。
しまったー。もしかして、今日も残業かもと。
自分で調子のいいこと言っておきながら、ちょっと後悔しはじめました。
昨日、さんざんやったので、まだ頭の中に昨日日程調整した各オーダの工期やリードタイムが記憶にあります。
いま言われたことは、なんとなく頭の中では整理できるのですが、これを表計算ソフトにバーチャートで記載していくのに、 時間がかかります。
最初に、ボトルネックになる大型機械加工の職場の日程を引き、そこから各オーダ毎の日程も交互に修正していきます。
あー、条件入れたら、自動的に日程表ができるといいのになー。 と思いつつ、オーダ毎、作業毎に、作業の前後関係と納期や、 設備の重複がないか確認しながら、日程表を仕上げていきます。 でも、さすがに昨日やったので、今日は調子がいいようです。 このペースなら、昼過ぎには終わりそうです。
いとう
課長、昼過ぎには終わりそうですよ。昨日やったものの修正なので、意外と早くできそうです。
鈴木さん
そうか、たのむよ。俺は手書きだったからなー、伊藤君が表計算ソフトで作る用になってから、 現場の受けもいいしな。今日は、定時に帰って、夕飯ごちそうするか、予定あるか?
と言われ、
いとう
いえ、予定はないです。ごちそうになります。
といいつつ、昨日は予定があったのに。
と彼女との昨日の気まずい電話を思い出し、しまった、 今日は、彼女に昨日の穴埋めのフォローでもしておくべきだったかなー。と思ったが、また後の祭り。 どちらにしろ、夕方電話しなくては。
時計を見て、あとちょっとで昼休みだ。なんだか、昼前には終わりそうかも。 と席を立ち、コーヒーでも飲みに行こうと思った瞬間、また電話がなっています。
ここにくる電話は、すべてトラブルを運んできます。 手配したものが遅れそうとか、現場の機械が故障したとか、納期を早めてくれとか?
はては、ワークをおしゃかにしたとか。
課長、製缶課課長から電話です。
と声が聞こえ、課長が電話を取ります。
鈴木さん
えー、だめだろー、そんなー、昨日も設変で大変だったのに、 なんとかなんないのかー、そうかー、 あそこのものはしょうがないなー、 ちょっと、伊藤君、今忙しいので、午後になったら現場に生かせるから。
と電話を切るなり、
鈴木さん
またトラブルだ。今度は溶接ミスで、検査から戻ってきたものを、 ばらして、再加工して、また製缶するんだが、例の大物なんだよ。こいつを製缶に戻すのは、 場所が無いので、やっかいだなー。そっちの日程表も、また書き直しだなー、 よし、しょうがないが、昨日の日程表もって、いまから営業部にいくぞ。
ということで、課長と一緒に営業部に行き、昨日の日程表を見せながら、 納期調整できそうなものを営業部の部長に確認します。 結局、昨日の仕様変更になったO社のオーダを仕様変更対応を理由に遅らせることにしました。
さて、また現場にでて、昨日と同様に、こんどは、溶接ミスしたオーダの各部品の進捗を確認します。
今日は、課長も一緒です。 なにせ部品点数が多く、サブユニット、ユニット、製品となん階層もの、子部品の加工があります。
また、昨日と同様に、仕掛かり中の部品がどこまで進んでいるのか、現場を這いづりまわります。
あれ、もしかして、今日も残業かも。
部品を探しながら、朝、試験課の課長が言っていた、進捗の管理方法が気になり出しました。
いまどき、黒板に記載していくなんて原始的なことでは、この多量の仕掛かり品に太刀打ちできそうもありません。
そういえば、企画品を作っている職場では、現品表にバーコードがついていたなー。
明日にでも、どんな仕組みなのか、聞きにいって見るか?
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