新米班長いとう君 第五話 「夜明け前」

あらすじ

カイゼンの糸口はあるのか? 現場へ行き、工程管理のヒアリングを始めました。

#5  「夜明け前」

昨日の彼女の話の内容を参考にし、少しずつ実践していこうと思い、
今日も朝早くから出社です。
業務開始前に、現場に行き、佐藤さんにカイゼンの糸口があるのか、
また、計画業務は楽になる可能性があるのか、ないのか?
確認しておきたいと思っています。
7時45分、ぴったり課長が来ました。 こちらをちらっと見て、現場事務所でたばこに火を付けます。

佐藤さん
今日は何だ。
トラブルは聞いてないなー。

いとう
はい、実は、工程管理をシステム化したくて、ちょっとお話を聞かせて頂こうと思いまして。

佐藤さん
ふーん

いとう
ただ、工程管理をシステム化しますと言っても、予算も出ないと思うので、
予算化するためには、費用対効果のような稟議資料を作りたいのですが、 それで、先ずは課長にお聞きしたいことがありまして。

佐藤さん
そりゃ、大変だな。めんどくさいことをやりたいのか。

いとう
設計変更やトラブル時の対応を、まー、計画変更時に迅速に対応できるようにしたいと思いまして。

佐藤さん
はー? そりゃー、おまえが早く帰りたいってやつか。

いとう
そうです。そうなんですけど、ちょっと勉強したんですが、
計画変更時以外にも、工程の進捗状況を把握したり、工場内の負荷を把握することで、
中長期の計画の精度を上げて、いわゆる工場の最適化のようなことができて、
結果、オーダ毎のリードタイムが短くなって、生産性が上がったり、 すぐにはそんなにうまくいくわけ無いとは思っていますが、徐々にですね。

課長はピンと来ていないような顔だ。ちょっと気を取り直して、

いとう
えーと。もっと簡単に言うと、
みんな毎朝、計画表を見ながら現物を確認しながら、
今日はこっちをやってとか、昨日の続きをしようとか、相談しながら作業してますよね。
夕方は、みんな図面を見ていたり、なんども資材の有無を確認したり、
計画表に進捗を書き込んだり...うまくいえませんが、 昨日バルブの建屋に行ったのですが、ここと時間の流れがちがうというか...

佐藤さん
そりゃーおまえ、バルブは数週間でできるけどな、こっちは何ヶ月もかかるものを作ってるんだ。
おまえからみりゃ、時間の流れが違うのは当たり前だろ。

いとう
日々の進捗がどこからでも見えて、その進捗と連動して日々計画が更新されれば、 生産性は上がりますよね。

佐藤さん
あたりまえだろ! それがおまえの仕事だろ。
毎日、おまえが滞りなくだな、 的確な指示というか計画をだせばいいんだよ。

なんか、かみ合っていないようです。

佐藤さん
計画がころころ変わるから、仕掛かっていたものをどけたり、 おまえ、あれ動かすのにどれぐらいかかると思うんだ?

そうなんです。ここは作業場所の確保も重要です。複数のオーダを同時進行させようとすると
何度も製品を移動することになり、それだけでかなり無駄な時間が発生します。

いとう
いや、それは知ってますよ。2時間ぐらいですよね。
外に出す場合には、半日かかりますよね。

佐藤さん
あー、それは知ってるんだな。
いま外で野ざらしになっているやつが、3台もあるだろ。 あれを1台再開するのに、1日はかかるぞ。再検査とかあるしな。

いとう
いや、いろいろ難しいとは思うんですが、まだ課長には相談していないんですが、
システム化のための費用対効果として、リードタイム短縮、 イコール、生産性アップを目指して、上申できればと思っているんですよ。

佐藤さん
まぁー、俺たちが毎日、進捗確認したり、ものを探したりしなければ、2割は縮まるだろう。
リードタイムがな!  正直、1台だけ製造したら、今のリードタイムの半分でできると思うけどな。

いとう
えーそんなに、
だって、いま言われているリードタイムは、 1つのオーダだけ見てもそんなに短くないですよ。

佐藤さん
あー、そりゃーおまえ、こっちだって、ここはあいつしかできないとか、
作業の順番だって、おまえ、あそこの渡辺班長が2人いれば、 前と後ろを同時に検査したりできるしな。
そうゆうことを考えて、おまえに工数をわたしてるんだよ。

いとう
そうゆうことですかー。そうですよね。
こっちは、作業者のことまで把握できないですしね。
ということは、こちらで作業者のことまで把握できれば、もっと的確な計画ができるということですよね。

佐藤さん
だから、それが、おまえの仕事だろ。
こっちは、毎日、急ぎのものばっかりくるから、結局できる人に作業をたのむわな。
こんなんじゃ、いつまで経っても作業者の教育の時間がとれないしな。

いとう
うーん...悪循環というか問題だらけですね

佐藤さん
おまえなー、人ごとみたいにいうなよー。
おまえは若いんだから、そこをなんとかするのも仕事だろうが!
時間があれば、こっちももっと現場を片付けて、潜水艦の2,3台作業できるスペースを確保したりできるんだけどな。
こー忙しくっちゃなー。それにこの不景気だからな、会社もとれるだけ受注したって感じだしな。

いとう
なんか、カイゼンする余地がほんとにあるんですね。

佐藤さん
はー、なにをいってるんだ。当たり前だろ。
おまえは、何年この仕事やってるんだ!

いとう
すみません。もう3年やってます。。。

佐藤さん
そういや、おまえ班長になったんだよな。
それなりの仕事をしてもらわないとな。
まー、いつも夜遅くまでがんばってるみたいだけど、 がんばってますの姿勢はいいけどな。
それなりの成果ってやつをださないとな。

いとう
そうですよね。これから、成果を出すために、システム化としうか、カイゼン活動をやっていきたいなー、 と思って、ちょっと相談させて頂きました。
さっそく、今日の夕方の生産会議で、提案したいと思っているんですよ。

佐藤さん
そこまで大々的にやるんだったら、応援するけど。おまえのとこの課長も昔おなじようなことをやって、 あまり成果が上がらなかったけどな。

いとう
そうなんですか?
いつごろのことですか?

佐藤さん
5、6年前だなー。
まーでも、作業予定表はわかりやすくなったんだよ。
その前なんて、1週間先の予定表と、月単位の予定表だけだったんだからな。

いとう
そうなんですか?まずは、事務所に戻って、うちの課長に相談してから出直してきます。 すみません。いろいろ有り難うございました

佐藤さん
おー!まあ、がんばれよ

気を取り直して、課長のところに戻り、先ほどと同じ話をしましたが、

鈴木さん
工程管理したかったけど、なにが何処まで進んでいるか、結局現場に行かないと分からないので、色々あったけど、計画表を見やすくしたりとかで終わったんだよ。
とあっさり言われました。

今日は、何事も無くこの分だと定時で上がれそうです。
どうしても、今日も彼女に会いたくて、電話してみました。

いとう
もしもし、今日も早く上がれそうなんだけど、デートしよう!

あはは
って笑われましたが、いい兆しです。彼女があははと笑ってくれるときは、機嫌がいい証拠です。つかの間の沈黙の後、

齊藤さん
いいよー

いとう
じゃあ、食事できる所予約しておく~。決まったら電話するよ!

齊藤さん
はい

と言うことで、今日も課長に定時に上がりますと告げて、会社の門を出たところでお店に電話し予約しました。
今日も彼女より先にお店に着いて、今日は先にビールと食事もオーダーしておきました。 結構遅れて彼女がやってきました。

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