新米班長いとう君 第三話 「生産管理の前提が無い…」

あらすじ

何時までもこのままの仕事のやり方ではいけないと思い、生産管理の仕組みを勉強しようと社内の別の部門へ訪問し、話を聞くことができたが、
自分の部門は、生産管理の前提が無いと言われ、全く使えない事が分かり、さらに落ち込むことに。
しかし、その夜、やっと彼女と食事が出来ることになり、その席で「別の管理手法」の話を聞くことに。

#3  生産管理の前提が無い…


2日連続の残業から、今日も早朝出社。
また、現場をまわり、昨日の作業計画表を提示してまわり、
自分の机でコーヒーを一杯。
8時前に課長が出社してきました。 さっそく、課長に昨日、考えていたことを相談します。

いとう
課長、おはようございます。
ここ2日連続の進捗確認や、作業計画表の再作成業務で、実は考えていることがあるのですが、バルブを作っている部署では生産管理システムを使って、進捗確認や作業指示を実施しているようですね。
なぜうちの部署では使えないのか、それとも使えそうなのか、 ちょっと、聞きに行ってきたいのですが、いいでしょうか?

鈴木さん
よし、勉強してくるのはOK。
じゃなー、あっちの課長に電話しておくか

いとう
いえ、大丈夫です、実は同期がその担当なので、そいつに聞いてこようと思ってます。 今日、午前中も結局、新人指導が無いので、いまから行っていいですか。

鈴木さん
よし、行ってこい。なんかあったら、内線で呼ぶから、午前中いっぱい聞いてこい。

いとう
有り難うございます。では行ってきます。

工場の中庭を横切り、ひときわ大きい建屋を目指します。
フォークリフトが頻繁に出入りしている横を通り過ぎ、工場内の現場事務所に向かいます。
なぜか、こちらの工場は、私の職場よりもきれいです。
現場事務所で、パソコンを見つめている同期の高橋君を見つけました。

いとう
よー高橋君、ちょっといいかな。
生産管理の仕組みを勉強しに来たんだけど、
午前中、ちょっと横で、作業を見ててもいいかな。
仕事の邪魔にならないようにしてるから、
あまり仕事の邪魔をする気は無いんだけど、
できれば、 簡単に説明しながら作業してくれると、たすかるんだけどなー

高橋君
いいけど、どうしたんだよ。
いつも忙しくしてるのに。今日はそんな時間があるんだ。

いとう
いやー、実は、2日連続で深夜勤務してね。
その原因が仕様変更対応と現場でのおシャカなんだよ。
2日連続で、工場中の現物探して、進捗チェックして、作業計画表を書き直してさー」

高橋君
「そりゃー、たいへんだー。こっちはすべて、システム対応してあるからね。
今はやりの「みえるか」だよ。だいたいこの端末を見てれば、製造現場の状況がわかるんだよ。

といいながら、高橋君は周りを見渡し、近くにだれもいないことを確認し、

高橋君
内緒だけど、実は、今、あんまり忙しくないんだよ。

と笑いながら言っています。

高橋君
まー、なんでも聞いてよ。

ということで、色々と説明を聞きました。
高橋君の説明を要約するとこうです。
日々営業からくる受注情報をオーダとしてシステムに入力。
オーダには製品の属性が設定してあるので、その製品マスターから部品表を参照し、手配品の手配が行われる。
社内工程に関しては、手配品の納期と連動して、作業手順が部品表から自動生成され、生産スケジューラと呼ばれるものに登録され、前日までに収集された実績を反映して、スケジューリングが行われる。
スケジューリング結果から自動的に在庫引き当てと在庫補充の計画も立案される。
製造現場への作業指示は、POPと呼ばれるシステムに本日の生産目標数量が表示され、製造現場では、定期的に、生産数量を実績として、バーコードリーダを使用し、生産品目をスキャンして、製造数量を入力しているのだそうです。
なんとなく、便利だということはわかりました。
たしかに、これなら、今現場でどの製品がどのぐらい生産されている。在庫がどれぐらいある。など
状況が把握できます。 ただし、自分の部署で使用するには、問題がありそうです。

いとう
高橋君、うちの部署は、企画品じゃないので、製品属性や部品表がないんだけど。
受注後に、毎回現場の課長、職長と打ち合わせして、作業手順や作業工数の見積もりをしてるんだよ。
また、作業している途中で、設計変更や再作成など、作業手順がころころ変わるんだよね。

高橋君
ちょっと待ってくれ、伊藤君。
いま部品表がないって言ったよね。

いとう
あー、そうだよ。うちの部署は、一品一様の製品を受注生産しているので、 設計が終了しないと購入品の手配もできないし、作業内容もわからないんだよ。

高橋君
伊藤君、そりゃ、生産管理の前提が無いって事だよ。
部品表が定義できないと生産管理システムは使えないよ。


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