『アジサイ』

雨を防ぐ傘もなく
一人歩く梅雨の路地裏
どれくらい歩いただろう
どこへ向かえばいいのだろう

穏やかな日常に
突然気付かされた6月の寒さ
いつからだろうか
ぬくもりが私を包んでくれていた

大切な人って想いは
勝手な妄想だったのね
初めからあなたに
私は見えてなかったの?
話してくれなくていいよ
迎えに来なくていいよ
もう、春は終わったの



町中に咲くアジサイに
自分を重ねてみたりして
雨に濡れた花は
どこか寂しげに微笑んでいた

愛と名付けたこの気持ちは
悉く雨に流され消えた
こんな私に残されたのは
広く空いた心のすきま
これに名前を付けるなら
虚しさと呼べばいいのかな



二人で築いた想い出に
そっと手を差し伸べて
心の外へ連れ出すわ
もう、帰ってこなくていいよ



冷たい雨に打たれ
むなしく過ぎていく時間
一人たたずむ私の前には
水色に咲く満開のアジサイ
いつしか雨が止んだ空を
一人見上げて笑ってみた
アジサイも少し明るさを取り戻した

2008.06.27

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