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『涙』③/④

だんだんと雲は黒さを増し、今にも雨が降り出しそうな空の下。他愛のない話題すら見つからない冬の無言の帰り道。互いに話し掛けることさえできずに、僕らはただまっすぐ駅へと向かって歩いていた。



人影もない小さな公園。さびれた駅の改札口。彼女を迎える電車が来るまであと13分。

「今日はありがと。海ってやっぱり広くて大きいね!ちょっと感動した。」

「だろ?喜んでもらえてよかったよ。…そろそろ改札入ったほうがいいかも」

「…そうだね。今日はありがと。じゃまた学校でね!」

「あぁ、また」





「さよなら」さえ伝えられずに、彼女を送ってしまった。どこまで不器用なんだ僕は。

改札の向こうで彼女は無言で手を振った。さっきまでまともに顔を見ることすら怖くてろくにできなかったのに、遠くからでもこうして顔を見ると笑顔が見えたようで、少しうれしかった。

彼女を乗せた電車を見送り、駅に背を向け南へ歩いた。僕はもう一度あの汚い海へ向かった。浜辺に着いたら彼女にメールしよう。メールでいいから別れを伝えよう。彼女の幸せのために、僕たちはもう会わない方がいい。

気持ちは焦るが、足はなかなか進まない。二度と会わなくなることがそんなに辛いのか?このまま僕と過ごす彼女の方が、辛いんじゃないのか。

彼女のことを想う建前の自分と、自分の正直な気持ちを主張する自己中な僕がいた。心の中での葛藤。はやる気持ちとごねる自分。板挟みの心が、ズキズキと痛んだ。

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