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『隣になった人』①/⑦

高校の時に、数学の授業を2回くらい続けて欠席したことがあった。
その時のことを思い出そうとすると、“欠席した”より、
“出られなかった”と表現した方が適している気がしたが
何が原因で“出られなかった”のかはよく覚えていない。
風邪だったか、部活の大会だったか、あるいはサボタージュだったか。

僕が通っていた高校は、授業ごとにクラスのメンバーが異なっていた。
席順は出席番号と決まっていたものの、現代文、生物、数学と、
だいたいの授業で隣の席は異なる人になった。
元々仲の良い友人が座ることもあれば、
見たことはあるが話したことがなかった人もいた。
隣になったその人と、一学期が終わるまで話さずに終わることもあれば、
仲良くなって、それ以降付き合いが続く人もいた。

その数学の授業で隣になった人は、それまで存在は知っていたが
一度も話したことがなかった女子だった。
そして一学期の終わりまで、ほとんど話さずに終わるような
近からず遠からずの、“ただ、数学の授業で隣になった人”に過ぎなかった。

そうなるはずだった。

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