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『無色のしあわせ』⑫/⑳

少年は急いで部屋に戻り、毛布を頭から被ってうずくまった。
センセイ以外の人と接触した。
言葉はわからない部分も多くあったが、間違いなく会話をした。
どこかでセンセイに見られたかな、もしそうだったら、次にセンセイに会ったときに怒られる。
叩かれるかもしれない、大きな声を出すかもしれない。
センセイは怒るととても恐い。

以前に外へ出ようとしたときに外がまだ明るく、外は多勢の人が行き交っていたとき、近くにセンセイがいて、すぐに部屋に押し戻されたことがあった。
その時はセンセイに目を覆い隠され、顔を強く掴まれた。
センセイの手の力はとても強く、顔がつぶれてしまうかと思うほど痛かった。

ふと手のひらの痛みを思い出した。
もらった絆創膏から傷口が少しはみ出している。
センセイに手のひらを見られたらどうしよう。
でも傷口の痛みは、これを貼っているおかげで少しマシだ。剥がしたくない。

少年は毛布の中でさらに小さくうずくまった。
このままどんどん小さくなって、センセイにずっと見つからなければいいのに。
消えてしまえたら良いのに。
どうして最近、こんなに胸が震えるのだろう。
今まで感じたことのない恐怖を感じている。
どうして、みんな自分にしゃべりかけてくるんだろう。
誰ともしゃべってはいけない、関わってはいけないのに。
腕までつかまれた、手のひらに触れられた。
あの人は一体なんなのだろう。
様々な痛みに苛まれながら仕事の疲れもあり、いつのまにか少年は眠りに落ちていた。

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