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『涙』①/④

僕が生まれ育ったこの街の中心には小さな駅がある。改札を出てすぐ右側には、腰の高さくらいの生垣で囲われた小さな公園がある。公園と言ってもあるのは砂場と控えめに置かれたベンチだけで、子供が少しがんばって走ればすぐに端から端まで届いてしまう。少し前に映画のロケで使われたらしいが、その映画を僕は見ていない。

駅から南に歩いていくと、水の汚い海が見える。あとは駅の反対側に無駄にでかい大仏があるだけ。観光地ということにはなっているらしいが、みんなこんな街のどこがいいのか。

僕はこの街がキライだ。



「あ、この公園映画で使われてたよね!」

「あぁ、そうらしいね。見てないからわかんないけど…。」



僕の隣で彼女ははしゃぐ。ユキミ。雪が深いと書いてユキミ。大学で知り合った人だがまだ付き合っているわけではない。僕にとっては初めての女友達で、海が見たいというから連れてきただけだった。

僕の高校は悪い奴らが集まるような学校で、そこで僕は隠れるようにただ勉強をしていた。そして勉強が得意なわけではなかったが、なんとか大学には入れた。地元からは遠い、地方の大学。冬には雪が積もり、気温も余裕で0度以下になるような、そんな所だ。

そんな雪国で偶然出会った二人が、今こうして海辺の街を歩いている。キライだったはずの地元を、この汚れた冬の海を、片想いの人に見てもらいたいと思って…。

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