『隣になった人』③/⑦

彼女は同学年の、同じバドミントン部の男子と付き合っていた。
男女混合の部活で男女分け隔てなく全員がとても仲が良く、
誰と誰が恋人としてくっついても何もおかしくないような集団だった。
僕が入っていたバスケ部の向かい側にバドミントン部の部室があり
いつも楽しそうな声が聞こえていた。

“数学の授業で隣になった人”とその彼は中学の時からの付き合いで、
その点を考えてもいつ結ばれてもなんら不思議はない関係だったように思う。
二人は、ごく自然な成り行きでそうなり、高校生活を有意義に過ごしていたことだろう。

彼の方は、クラスのムードメーカーで、いつも彼の周りは賑やかだった。
友人も多くいたし、こちらも男女問わず誰からも人気があった。
少しばかりふざけすぎることもあったので教師からは少なからず目をかけられていたが
付き合っている相手があの彼女だとわかると、教師は安心していた。

僕は彼とは正反対のキャラクターだった。
取り立てて明るい存在ではないし、クラスの中心にもいなかった。
嫌われているとは聞かなかったが、特に人から好かれていた記憶はない。
極わずかな仲の良い友人と、当たり障りのない高校生活を送っていた。

そんな、僕とは真反対の彼と長く付き合っている点が、
僕が彼女に興味を持てない理由の一つだった。

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