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『無色のしあわせ』⑰/⑳

修道女は優しさに満ちている。
自分にできることが少ないかもしれないが、そんな中でも、まるで落ち葉の中からどんぐりを拾い集めるように、
私の拙い言葉一つひとつを、丁寧に耳を傾けて話を聞いてくれた。
そして持っている知識を総動員してアドバイスを授けてくれた。
最後は宗教の話になったが、いくら考えても答えが見つからない今は、
そうすることが一番心にすっと染み込むのかもしれない。
渇いた大地に雨が浸透するように。

信じて祈るという修道女の瞳の奥は輝きに満ちていた。
私の瞳は、彼女の目にどう映っていたのだろう。
この街の曇り空のように、くすんだ色だろうか。
暗い影を抱いているように見えていただろうか。

外は曇天にも関わらず、図書館のステンドグラスは、
雲の合間からこぼれるわずかな太陽の光をいっぱいにかき集め、
美しく虹色に輝いている。
中央に十字架があり、その少し左下にはうつむきながらも微笑みを携えた女性が、
胸の前で手を組んで静かに祈っている様子が描かれている。
祈る女性の周囲、そしてステンドグラスの至る所に天使がたくさん飛んでいる。
天使たちもみな笑顔だ。
中には楽しそうに笑う者も、無邪気に笑う者も、優しく微笑む者もいる。

十字架の下で微笑む女性の絵を真似て、胸の前で手を組んでみた。そして目を閉じた。
この女性は誰を想っているのだろう。
何を考えているのだろう。そしてどんな答えにたどり着くのだろう。
この場面の翌日があるとしたら、この女性は、この天使たちはどんな場面を迎えるのだろう。同じように笑顔なのだろうか。

私の明日はどうなっているだろう。
穏やかに、安らかに明日を迎えられるだろうか。
答えを急いで見つけなくても良い。
いずれ自然と、私の中に考えが浮かぶだろう。
焦らなくても良い。そんな風に思えた。


図書館から出るとまた雨が降り始めていた。
図書館の入口を出たすぐ横にはまたあの占い師がいた。
「何か閃いたかい」と占い師は言った。
「大丈夫、答えを急がなくても良い。そのうちに、私にとって最適な答えが見つかるわ。」
「どんな答えに辿り着くかね。神様のお告げが楽しみだ。
俺は神様は信じちゃいないがね。俺が信じるのはこのカードだけさ。」

「あなたの意見も聞かせて。コロルのこといろいろ知っているでしょ。」
「あら、俺のこと信じてくれるの?神様は俺だったかな。」
「今はいろんな意見を聞いてみたいの。」
一呼吸を置いて「覚悟はいいか?」と占い師は言った。

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