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『無色のしあわせ』⑭/⑳

非常にたくさんの情報が一気に押し寄せたため、体は熱くなり頭もぼーっとしていた。
部屋の窓の外に見える人通りを、彼女は見るともなく見ていた。

どの人も前か下を向き、行くべき所へ向かっている。
それぞれの行き先には待つ人や物があり、行きついた先の行き止まりには、きっと幸せがある。
だからどの人も後ろは振り返らず、脇目も振らずに前や足元を見て進み続ける。
街行く人達はそんな風に彼女の目に映る。

私はコロルを助けてあげたい。
病気のために色が分からず、明日食べる物も満足になく、誰とも触れ合わず、この社会の片隅でたった一人で生き抜いている。
私がしてあげられることは山程ある。
それなのに彼は、あの占い師はそれを止める。手助けを拒む。

どうしてだろう。コロルがセンセイから、人との接触を禁止されているから?
でも占い師は「アイツはあれでも幸せかもしれない」と言った。
本当にそうだろうか。私にはとてもそうは思えない。

好きなものを食べて、好きなことをして、好きな人と話をして、好きに生きる。
自由に生きる。やりたいことはなんでもできる。
それが幸せなことだと思う。
誰でも、誰もがそういう幸せを求めて良いはずだと思う。
誰にとっても、それは共通認識だと思っている。
思っていた。

私の考えの押し付け?
コロルにとってはそうじゃない?
コロルにとっての幸せ?
コロルのやりたいこと、好きなことって?
まだまだコロルのことについて知らないことばかりだ。
〝アイツの心はアイツのもの、アンタがどう感じるかは関係ない〟占い師の言葉が脳裏をよぎった。

窓の外を行き交う人々は色とりどりの服を身にまとい、足早に通りを抜けていく。
私に見える世界の色とコロルの見ている世界の色は同じじゃないのだろうか。
違う色に見えているのだろうか。
モノクロに見える世界とは、いったいどんな景色なのだろう。

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