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潮風王国


毎年春になると出向くことにしている房総半島の花摘みに、誕生日の日、家族で出かけた。

前日は記録的な強風が吹き荒れていたのでどうだろう、と思っていたが、当日はそれほど風も残らず行楽日和となった。

我が家からは車で2時間くらい。途中の市原SAでお昼ご飯にして、MIYABIのパンを買ったりした。わたしはお昼を食べないので、夫と長女はラーメンとチャーハン、次女に離乳食を与える。道中で買ったバースデイリワードを使ったスタバのグランデドリンクを片手にひたすら運転する。富楽里に寄ろうか一瞬悩んだが、子ども2人連れていると車から降りるのも一苦労なので見送り。またドライブに来よう、とひそかに思う。

房総半島の春は花摘みが有名だと勝手に思っているのだけれど、いつも行くのは潮風王国、という道の駅。その向かいに花畑があり、そこで花摘みをすることができる。いつも決まって10番の花畑に行き、ストックや金魚草、キンセンカを摘む。コツは根本から切ること、真ん中の花が終わっていないものを選ぶこと、らしい。毎年行っていてもパーフェクトな花を摘めず、お店の人に色々教えてもらう。今回はリナリウムという小さなお花をサービスでブーケにしてくれたりした。

花摘みをしたあとトイレがてら潮風王国にも立ち寄り、カフェで飲み物といちごソフトを買う。見慣れないプリン屋さんができていたがトイレに行っている間にお店が終わっていた。潮風王国内に売り場があったのでそっちでキンセンカ入りのプリンをひとつ、なんか千葉っぽいお菓子を少し買う。

そのあとは船のオブジェ?に長女と少しだけ登り、近くの遊具で遊び、帰路についたが、渋滞に巻き込まれて帰宅したのは19時近くだった。赤子がいると1日のリズムが崩れたときが少しだけ大変。なんとかかんとかお風呂や洗濯、買ってきたものの処理などして23時頃ようやくベッドに潜り込んだ。

誕生日に行きたいところとしてリクエストしたので、個人的にはとても楽しかった。疲れももちろんあるけど、摘んできた花が部屋の中で香って、春がきたんだなとぼんやり思ったりしている。

花摘みに行くと、いつの日か、祖母を連れてきたことを思い出す。見慣れた花畑の中に、もういない、写真の中の祖母を探す。もちろんいるわけがないのだけれど。今はその花畑を夫と子どもたちと歩く。思い出の中の祖母と、眼の前の家族が交わるような不思議な感覚を覚える。

あの花の香りのする、空と海とが交わる場所は、わたしにとって春の象徴であり、ずっと特別なのだ。もしかしたら天国とは、あの場所のことなのかもしれない。祖母との思い出、幼少期に父母妹と幾度となく来た思い出、変わらない景色、他になにもないから止まったような時間感覚。

来年も、行くことができるだろうか。それとも、概念としての天国にでも行ってしまっているだろうか。未来のことはわからないが、私の先を歩く、自分が選んだ家族が光の中でぼんやり輝いて見えたような気がした。


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