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チケットを切ってもらい、ホール前のスペースに出る。一面に窓。横にも縦にも大きく、艶のある黒色のビルが並ぶ。下には木々にぶら下がったイルミネーションと、スタイリッシュな噴水のある正面入り口。ここまで来るのに、ビル街を行ったり来たり、大手町駅地下道を行ったり来たり、同じマップを何度も見、「目的地周辺です」の声に戸惑い、終始心が折れそうになった。11月末にもかかわらずじんわり汗をかいた。東京を思い知らされる。物販や待ち合わせ等で人口が増えてきたので、早速ホール内へ。小針公民館程度のキャパ(作りも似ている)だろうか。チケットに目をやると、やはり、かなり近い席。ステージをパチリと撮り、客層を観察しているとあっという間に開演。斜め左前の女性が、空いている右隣を気にして、周りをキョロキョロしていた。柴田さんは、定刻通りにかわいらしい笑顔を魅せた。深くお辞儀をした。曲が始まった途端、今日来れて良かったと思った。涙が溢れそうになるのをぐっと我慢した。ここじゃないだろ。今じゃない。一曲目が終わり、低めの声で「サンキュー。」深いお辞儀。ブラボー。曲間は短く、曲名と感謝を述べると、次々と歌う。ありがたい。3曲目の初め、空いていた女性の右隣が埋まる。背の高い男性。2人は軽い会釈を交わす。3曲目が終わる。柴田さんちょっとだけ喋る。アコギとエレキ持ち替えてたりしてたかな。女性が男性へ3の指を見せる。またすぐ曲へ。全部が凄くいい。伸びやかな声。リズム感のあるギター。ひとりぼっちで奏でる、柴田さんの紡ぐ言葉。8、9曲目くらい、イントロ、勘付く。来る。1年前、いや、あの時から1年間ずっと、救いだった。的中した。目の前の2人は、一瞬目を合わせた。「車よりバイクのほうがぜったい速いときがあります」一つ一つの言葉を噛み締めようと、柴田さんの姿をじっと見たり、目を瞑ったり、試行錯誤した。受け流すまいと。全部拾う。拾って、心の中の宝箱にしまいたい。「ここにないからどこかにあると思って来ただけです」気づくと男性は涙を拭っていた。目の奥が熱くなる。この人も。きっとここにいるみんなそうなのかな。「あなたなんかにはきっと一生分かるはずない夢です」目を瞑る。また開ける。柴田さんを見る。取りこぼさないように、じっくりじっくり掬う。自分の想いに呼応するかのように、柴田さんの言葉がホールいっぱいに流れこみ、溢れていく。「毎日のせいで涙を見落としてるはずだから さあ今ならいくらでもやってみて全部受け止める」外に行きたい自分と、その場で地団駄踏みながらもがいている自分。日々反省や後悔ばかりで、何一つ肯定できずに、納得できていない自分。柴田さんの言葉は、そんな私にも、確実な一歩をくれる。たとえ小さくても、しっかりと前に進める。そして、明日、明後日が前よりちょっぴりキラキラしたものに感じる。そんな世界を創ってくれる。心の中で一緒に歌う。「給料から年金が天引かれて心底腹が立つ」「腹が立つ自分でも驚くくらい うーん腹が立つ」1年前の自分を思い出す。「行けるようになったから行きたいとこに来てみただけです」

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