札大野球部から初のNPB入りを目指す、亀山英輝投手に銭函でお話を伺いました。 徳島インディゴソックスからNPBプレーヤーを目指す挑戦を追跡します。

たぶん野球をやっていなかったら、そして、野球を続ける選択をしていなかったなら、彼は恐らく小樽を離れることなく一生を過ごしていたのだろうな、話を聞きながらそう感じた。その彼がもう間もなく、北海道から遠く離れた徳島県へと旅立とうとしている。「本気で野球を続けようと思い」見つけた行き先は徳島インディゴソックス。四国アイランドリーグplusに加盟するいわゆるプロ野球独立リーグのチームだ。

彼とは札幌大学野球部の亀山英輝投手、私の中での札幌学生野球連盟・力投型ピッチャー・オブ・ザ・イヤー。リーグを代表する好投手、例えば、渕上(星槎道都)や本前(北翔)が力感の少ない軽やかなフォームからスピードボールを繰り出す傍ら、体全体を使った躍動感溢れるフォームから腕を強く振り切るそのスタイルは強烈な存在感を発揮していて、かねてから気になる存在だった。その彼が卒業後、徳島インディゴソックスに入団するという知らせを聞き、小樽市銭函に彼を訪ねた。

『俺が現役のうちだったら、好きなことをやれ』父の言葉も彼の背中を押した。小樽にとどまり野球を続ける選択もあったが、恐らく上を目指すことのない取り組みになる事への抵抗があったのだと思う。そして逃げ場のない道を彼はあえて選んだ。「1年間、ずっと野球をやる」独立リーガーという道だ。不安はありますか?という間の抜けた問いかけに「あります、例えば高校のときだったら大会の期間はせいぜい1週間。その間、少し腕が痛くても耐えれば、なんとかなりましたけど、今度はそうはいかない」と率直に胸の内を明かしてくれた。

しかし、その不安を乗り越えた先にあるものを彼は見据えている。それは155キロのスピードボールを投げること。そしてNPBのドラフトで名前を呼ばれる投手になること。

「大学の2年から3年にかけて球速が8キロアップしました」考え方とトレーニング方法を変えたことで彼は自分の中にある秘めた力を発掘した。「まだまだ、自分は伸びる」彼の心の奥底にはそんな想いが宿ったはずだ。その想いを見て見ぬふりのできない几帳面な性格なのだろうと思う。3年秋のリーグ戦期間中、あるNPBチームのスカウトから『こんないいピッチャーがいたのか、来年の伸び方次第では(指名も)ありうる』といった評価もあったそうだ。「でも結局、最後の1年伸びなかったので・・・」ひょっとしたらNPBに手が届くところにいたのにひと伸びできなかった。さらにもう少し遡ると「高校の時のMAXが140キロ、でももし小樽とか札幌の強豪私学に行っていれば、高校の時点で145キロを出せていたかもしれない・・・」(たしかに、高校時代にその球速を出していたならば、彼のその後の歩みも変わっていたのだろうとは思う)そんな後悔に近い想いも混じりあってくる。その様々な想いが、NPBプレーヤーをコンスタントに輩出する球団の門を叩かせたのだろう。<やり切ること、やり尽くすこと>彼の頭の中に渦巻くキーワードをそんな風に想像してみた。

最終学年ではチームの副主将・ピッチャーリーダーを担っていたこともあり後輩から「フォームを見て欲しい」と頼られるケースもあったというが「あんまり良く分からないんですよ」と言い「僕は投げるときは”かめはめ波”を打つイメージなんですけど、自分の感覚を理解して貰えなくて」と笑う。決して大きいとはいえない体全体をしならせて、腕を強く振るそのフォームは彼自身が築き上げたスタイルだから、なかなか言葉での伝達が難しいのかもしれない。ある種、我流で築き上げた今のスタイルに感覚的な共鳴を伴うよき導きが徳島で加わったとき彼の目指す高みが現実的に攻略可能な嶺として眼前に迫ってくるのだろうと感じた。
がんばれ、亀山投手!

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