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第7次芋煮会戦証言記録集より「ある合成百万都市新兵の証言」

A.D.202x 10/16 22:10
H川第3前線基地「キャンプ・KH」

大学生になってそろそろ半年。まさか「大学」というのが合成百万都市の新兵養成機関だとは思わなかった。州の壁の向う側がこんなことになっていると思ったら、まさか大学受験に乗じて州の壁を越えようとは思わなかっただろう。
地元は平和だった。一杯のうどんで全てが繋がっていた。地球人類はいつかうどんで分かり合い、自然法とうどんによる平和が実現する。町内会でも高校でも、そう習って育ってきた。

世界は、そこまで甘くなかったらしい。

今朝、「サークル」の先輩との連絡が途絶えた。
彼女は「中立地帯」でバイトしながら調理重機ギルドの情報を集め、週に2度キャンプ・KHまで持ち帰ってきた。
今日がその定期報告日。午後1時を過ぎて戻らなかった事実を以て、「理事会」は中立地帯への侵攻を決定した。

あと20分で、第一陣の突入が始まる。
全ては百万都市のため、先輩のため、そしてこの日記の次の頁を書くために。

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第6次会戦にてついに「奥羽の巨盾」を失った合成百万都市はその総力を結集し、禁断の兵器の開発に着手した。
調理重機自体を可能な限り無傷で回収し、なおかつパイロットの脳と神経系にダメージを与えず排除する。そしてら第5次会戦から百万都市が導入してきたパワードスーツに調理重機パイロットの脳と神経系を組み込み、「再利用」する。その狂気的目標のために用意されたのが「ソラニン弾頭弾」であり、キャンプKHの新兵は何も知らないままこの悪夢的兵器の運用訓練を重ね、実践に投入された。
この夜から22日間に渡り繰り広げられた第7次芋煮会戦は、その犠牲者及び急性ソラニン中毒による戦線離脱者の数から、俗に「赤紫の鍋」と呼ばれることになる。


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