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童貞を捨てた時の話 fin

「次は新大阪、新大阪」
気がついたら新幹線に乗っていた、ランデヴーだ。

成人式から2週間ほど毎日ラインをしていて、あの日々ほど幸福な時期は人生でも指折りしかない。

新幹線を降り電車に乗り継ぎ改札を出る。全然見当たらなかった。駅が広すぎる。

後ろから肩を叩かれる。振り返るとあの子がいる。
「久しぶり、混んでた?」

「地元(田舎)に比べたら、まぁまぁかな」

適当に挨拶を済まし、大阪の観光地を回る。

道頓堀、通天閣、河童橋、それなりに回った後に一緒にスーパーへ行く。

女の子と付き合ったことが無かったのでこの日常の時間を共有するタイミングが1番幸せだったと覚えている。

晩御飯を作ってくれるそうでお家にお邪魔する。

一緒に買った食材を調理してもらい、お酒と共にいただく。
とても美味しかった。味がというよりは、なんというか気持ち?心が満たされたような気分だ。

その後お風呂に入った後、一緒にYouTubeを見た。興味のない内容だったが一緒の時間を共有してくれたのだろう。

なんとなく適当なリアクションをとっていたらもたれかかってきた、頭を撫でたりしたがこの後どうしていいかわからない。AVを早送りする癖がここで災いを招いた。

20分くらい経った後、布団を用意してくれた。

用意してもらった布団に入るが後悔はしたくなかった。

寒いと言って女の子の布団に潜り込んだ。どういう流れで情事が始まったかはもう記憶が薄いが、上手く機能しなかった事を覚えている。

「お酒飲みすぎちゃったもんね」

自分はなぜか、いたたまれない気持ちになり元の布団に潜ってしまった。

朝方、再び布団に潜り込む。

向こうもくすぐってきたり、そういうよくあるじゃれ合いはしたが機能しない。

そこからはよく覚えていないが、帰そうとしてたような気がする。先帰っていいとか言ったり、上の空みたいだった。

あの時の対応の正解が今でもよくわからないが、原因はなんとなくわかる。

途中まで一緒の電車に乗る。うたた寝をしていたが、自分にもたれることは無かった。

「次は梅田、梅田」

女の子の目的地だ、目を覚ますと席を立ちこちらを向く。

「またね」

「あぁ、またね」

ハイタッチをして別れる。

閉まるドアに目を向け、彼女の背中を見つめる。
またねに再度会う意思がないことはわかった。
だからとにかく記憶に焼き付けておきたかった。

車窓はすぐに暗くなる。写真のフォルダを見返す。
寂しい気持ちになりながら削除をし、帰路に着く。


そういうことができたことに対して自信は付き、大人の男になった気はしたが、機能を果たせなかったことに対する恥ずかしさもあった。

ハッキリと言えることは機能していたとしても今も続く関係は築けなかっただろう。
でも、後にある似た経験をスムーズにする糧にはなっている。

ありがとう。またどこかで。




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