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ホラーと狂騒「ねじの回転」

男女の亡霊と対峙する女性の話です。女性は住み込みの家庭教師。女性がたまたま霊が見える系の人であったことから、亡霊との攻防が始まります。スリラー的な展開のはずが、話は次第におかしな方向に。例えば女性が、教え子の少女がボートを漕いで、さらにはそれを隠すところまでやってのけた、と思いこむシーン。女性は「小さい少女の仕草にしては、驚くべき離れ業」「異常な臨機応変の手管」と言うのですが、小1くらい、下手したら幼稚園くらいのお嬢様がボートを漕ぐこと自体おかしな話です。
 ほんとうにすべて亡霊の仕業なのかと疑いたくなるような女性の妄信ぶりに圧倒され、何も明らかにされないまま話は終了します。教え子の少年が放校になったのは、おそらく同性愛的な理由からでしょう。しかし、ここもはっきりとした描写はありません。にしても、当時いくら違法とはいえまだ10歳ほどなんですがね、彼。それが理由ならイギリスって厳しい!

ちょっとそれますが、イギリスは国民が望んでの階級社会という文章を読みました。前述の亡霊は男女で、階級が違うのに恋愛関係にあったようです。それに対して登場人物(女中頭)がとかく批判的で、とくに身分が下である男のことは、どうしようもないクズみたいな言いようでした。きれいな顔はしているがなれなれしい、つまり階級を気にしない性格で、現代に生きるわたしたちが実際に会うと、ああ、モテるのわかる、という人物なのかもしれません。身分制度絶対主義ってこわい。

こういうことをいろいろと考えさせてくれるところが、この作品のおもしろいところなんでしょうね。

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