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kawagoetsuvasa
路地裏王子 3話
「今日は、大切なお客様が来るからお茶お願いね」
もう聞きたくないほどに聞き飽きた声が、朝から響いている。
どうせなら子守唄のような優しい囁きがあれば、1日は変わるのだろうか。
浮かれすぎて仕事にならないか、申し分ないほどに仕事完璧人間になれるのか。
まぁないものを考えるとか想像するとか。
日常に絶望を呼ぶだけなのだ。
それでも ほんの少しでいい。
夢をみていたい…
苦痛だった8時間労働を終えて。
今日も路地裏へ向かう。。
きらびやかなネオンの中を、シャボン玉のようにフワリフワリと気分は飛んでいる。
カランカラーン。
扉が開くと直ぐに、カウンターに目をやるが。
そこに蓮はいなかった。
「今日は休みよ。」と何も言わぬ私に、ママが言う。
えっ。バレてる?
まるで、レースの服を着たスケスケの心が。ママには見えていた。
「そうですか。」と、別に〜みたいな顔つきで答えてみた。
衣装に着替えて、当たり前のようにカウンターに入る。今日は、愛想笑いで勘弁してくだされ。
蓮のいないこの場所は、まるで戦国時代の武士のよう。
今夜もここで戦うのみよ。
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