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緑のラグマットと鳩の箸置き

“失恋した”
友人からの短い連絡。

先に好きになったのはこっちだけど、向こうも好きって言ってくれたのに結局終わっちゃうんだもんね。
悔しいよ、やっぱり。

あんなに「好き」って伝えたのにさ。
別れたら何にも残らないんだね。
せめて、あの時の「好き」って感情や言葉を返して欲しいよ。

じゃないとさ、次に進めないと思わない?
もう私の中の「好き」は空っぽになったんだもん。
それくらい、あの人に私の「好き」を渡したんだから。

そう言って、泣きながら話す友人。

幸せそうに笑っていた時間も知っていた僕は、その涙の価値も分かっていたつもりだ。

「好き」を返して欲しいと言った友人も本当は分かっていたと思う。
その「好き」は相手がくれたモノだったんだと。

好きな人と一緒に過ごして生まれた感情だったんだ。
好きな人がいたから感じた感情だったんだ。
ひとりでは生まれなかったモノだったんだ。

自分の中の「好き」が空っぽになってしまったんじゃない。
別れてしまったけれど、好きだった人からもらった「好き」を相手に伝え終えただけなんだ。

これを言うと怒るかもしれないけれど。
なんかさ、それって素敵なことだと思ったんだよね。

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