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ショコレ

「私、自分のこの声コンプレックスなんだよね」

『君の声が優しくて僕は惹かれたんだけどな』

『今日もやっぱり可愛いと思ってるよ』

「可愛くなんかないよ、見る目ないんじゃない?」

『そうかな?でも僕は好きだよ』

「知ってる」

『良かった』

「私も」

『え?』

「好きだから、私も、ちゃんと」

『うん、知ってるよ』

僕らは2人でよくココアを飲んだ。
特別、何を話すわけでもなくボーっとテレビを見ながらソファに並んで座った。
好きな人のことを好きだという気持ちが、日常の中に溶けていくことが愛おしくて仕方がなかった。
僕が前を向けなくなった時、好きな人はいつでも優しかった。
「また温かい物でも飲みながらお話ししようね」
そんな言葉に僕はいつも救われた。

僕は彼女のことが大好きだった。

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