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想像と想像と想像 #37

「注射」

題名からお分かりになるかもしれないが、僕はこの世の中で注射というものが、トップクラスで理解できない。

まず、飲み薬などの医療の発達があるにもかかわらず、未だに腕に針を刺すという行為をしなければならないことが理解できない。
文明の発達に乗り遅れてしまった、過去の遺物というイメージしかないのである。
腕に針を刺すなど、文明人である現代人からすれば到底理解できなさそうな野蛮な行為であるにも関わらず、人々は黙って腕を差し出し続ける。
民主主義が認められている社会において、脳死で腕を差し出すなど言語道断なのである。
もっと皆さんには、腕に針を刺すという行為について考え直してみて欲しい。

次に、針を刺す前にアルコール消毒をしなければならない点である。
通常、針を刺す前にアルコールシートのようなもので刺す部分をふきふきされる。
この時間こそ、注射の恐怖感を倍増させるものなのである。
この拭く時間があることにより、僕は「あぁこれから刺されるんだな」という認識が深まってしまう。

さらに、この拭く時間に
「注射とかって子ども時代苦手でした?笑」
などと聞いてくる想像力に欠けた無能がいる。
薄笑いを浮かべたその表情には、
「お前これから痛い思いすんだな笑
 まあ俺は痛い思いをさせる側だから関係ない   けどな笑」
という優越感が含まれていることも、僕をイライラさせる。
このような質問をしてくる人には、人の痛みがわかるはずもないため、即刻医師免許を剥奪するべきである。

最後に、大人は注射の痛みを我慢しなければならないという固定概念があることである。
子どもであれば、注射前に駄々をこねて暴れたり、注射中に泣き叫ぶことが許されるのであるが、大人はそれをしてはならない。
この固定概念により、僕には診察室内で愛想笑いをし続ける必要が出てくる。
本当は、地団駄を踏んだり、ブリッジしながら泣き叫び、注射を逃れようとしたいのにである。
多様性というくそみたいな言葉が流行っているこの時代に固定概念を押し付ける風潮が蔓延していることは、非常に全時代的であるといえる。

こんな理由から、僕は注射が大嫌いなのである。

ただ、一見乱暴そうなおじいちゃん先生の注射がめちゃくちゃ痛くないことと、このおじいちゃん先生のぶっきらぼうに腕を掴む手がこの世の中で1番暖かいことだけは、十分理解している。

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