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パイロットのセンス

 ふと、アメリカで訓練をしている時に、教官とハンガー前でキャッチボールをしたことを思い出した。楽しかったなぁ。ロサンゼルスの空は蒼かった。

 そして、アメリカの教官がおっしゃっていたことを今でもはっきり覚えている。

99%の人は、パイロットのセンスはない。センスは、磨いていくものだ。

と。その時は、そうなんだ、じゃぁ、僕も頑張ればできるようになるんだ、ぐらいに思っていた。センスという言葉を、深く理解していなかった。

そして、今やっと、そのパイロットのセンスという意味が分かってきた。

パイロットのセンスとは、キャッチボールである。

キャッチボールのボールの投げ方が上手い、下手とかいう話ではない。即ち、操縦技術が上手い、下手とかいうセンスではない。用は、相手に向かって、ストレートに、相手が取りやすいようにボールを投げようとすることである。時には、失敗するかもしれない、だが、そういった意識が大切なんだ。

 だから、パイロットのセンスがあるかないかは、飛行機に乗らなくても分かる。例えば、口述試験で質問されたことに対して、その解の核となる答えを返答しないといった具合だ。周りくどい言い方や、そこを聞いているんじゃないんだよな、とか、丸暗記だけに頼った回答。これらは、ようなボールを相手にすぐ投げ返さず、他の人にボールを投げたり、いつまでも自分でボールを持っている状態だ。

さっさとボール投げる。しかも、相手が取りやすいように。どうやったら相手がボールを取りやすいか、どうやったら上手く投げられるのか、そこを考え、試し、最適解を追い求める。これが、即ちパイロットのセンスを磨く、ということだ。

僕は、教官が気付くきっかけを与えて下さったお陰で、かなりパイロットのセンスを磨いて来られた。現時点の僕なりのパイロットのセンスは、先に述べたことであるが、これからもっと違った見解になるかもしれない。その発見もまた楽しみだ。

まだまだ改善の余地がある。もっとセンスを磨くことができる。さぁ、やってみよう。