悩

【悩】のイメージ。

2月13日のブログでは、
【脳】と【悩】というふたつの漢字について書きましたが。
白川静先生の『常用字解(第二版)』にて、
この【悩】という漢字を調べてみたときにね、
とあることが気になりまして。

その箇所をふたたび引用いたしますと、、

【悩】 ノウ(ナウ)/なやむ・なやます
もとの字は惱に作り、音符は𡿺(のう)。𡿺は古い字系がなくて確かめることができないが、囟(し)と基本的には同じ字であろう。囟はひよめき(幼児の頭蓋骨の縫合部分)の形で、その中に考える働きをする脳がある。思はもとの字は恖(し)に作り、おもう、かんがえるの意味となる。𡿺はひよめきに頭髪が少しある形とみることができる。[説文]十二下は㛴(のう)を正字とし、「恨む所有るなり」とし、恨んでなやむの意味とする。「なやむ」の意味に用いる。

【悩】という漢字は、
「恨んでなやむ」の意味とする。
という箇所なのですが。

この最後で記されている[説文]とは、
[説文解字(せつもんかいじ)]という
後漢の時代、許慎が、当時見ることのできた資料によって、
その字形を研究し、9353字を540の部首に分け、
その部首によって字形を説明するという方法をとった
字形の研究書である。とのことなのですが。
(『常用字解(第二版)』731頁より。)
この[説文解字]では、
【悩】という字形は、
「女へん」に「𡿺」をつけた「㛴(のう)」を正字とし、
「恨む所有るなり」としていた。とのことで。

これを読みながら、ぼくは、
じぶんなりの【悩む】ということばの印象について、
あらためて考えてみたのよね。

まずはさ、【悩む】って、
語句を『広辞苑(第七版)』で調べてみれば、
「1. 肉体に苦痛を感じ苦しむ。」であったり、
「2. いろいろ思い考えてもうまくいかず、
 精神的な苦痛や負担を感じて苦しむ。
 こまる。思いわずらう。」であったり。にもあるような、
どことなく、ネガティブな印象が感じられる。

たとえば、
「悩む」と「考える」はちがう。と言われていたり。
後者の「考える」は、どちらかと言えば、
ポジティブな印象も含まれる気がする。
ほかにも、たとえば、昼食とかでね、
「とんかつ」か「からあげ」かのどちらを選ぼう? 的な、
(これしかたとえが思いつかなかった。)
「うれしい悩み」という言い方もあったり。
わざわざ「うれしい」のことばを直前につけなければ
「うれしい」という印象にならないほど、
【悩む】とは、そもそも、ネガティブなのだ。

【悩む】ということばでぼくが感じるイメージはさ、
これは、村上春樹さんの受け売りだったやもしれないですが、
「閉じられたサーキット場をぐるぐる回り続ける。」
というような。つまりは、
ある考えごとを、どれだけ考えても、
おんなじ場所に自動的に戻ってきてしまって。
それを、ずっと繰り返してしまう。みたいな???

そんなような、
「閉じられた」イメージを想うの。

ともすれば、そこにはもしかしたら、
[説文解字]で書かれているという
「恨む所有るなり」というのも、
ふんいき、ちょっとだけわかるような気もするし。
【悩む】には、その「恨む」という感情が、
大元にあるのやしれないな。
「恨む」ことによって、じぶんも閉じられてしまう。
のような。。。

思考が、自動的に回り戻ってしまうのを、
なんとか立ちどまって。そして、
そんな「閉じられたサーキット場」から出られる
非常口を見つけたい。

令和2年2月19日


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