古い詩の韻と完【膚】。
さくじつのnoteでは、
【虜】と【慮】の漢字は似ている。
その字の中身が、
「力」ならば【虜】で、
「心」ならば【慮】なんだ。さらには、
「月」ならば「皮膚」の【膚】か。
と書いて、おとといは【虜】を調べたので、
さくじつには【慮】のほうも見てみたのですが。
こうなってくるとね、もうひとつの
【膚】の字も調べてみたいー。
なので、またもや、
いつものごとし、白川静先生の
『常用字解[第二版]』を開きますと、、
【膚】 フ/はだ・あさい
形成。もとの字は臚に作り、音符は盧。[説文]四下に「臚は皮なり」とし、膚もあげている。金文の字形は膚に作り、おそらくそれがもとの形であろう。古い詩では膚は胡・余などと韻を合わせているので、盧の音で使われており、のちに音が変化して膚の音になったのであろう。「はだ」の意味に用いるが、皮膚(はだ)は薄いものであるから、膚薄・膚浅(あさはかなこと)のように、「あさい」の意味にも用いる。傷のない完全な皮膚にたとえて、傷のない箇所を完膚といい、完膚無きまでとは、徹底的にの意味である。
【膚】は、もとは【臚】に作り、
たとえば、古い詩の中では、
「こ(胡)」や「よ(余)」などと
韻が合わせられていることから、
「ろ(盧)」の音として使われていたと考えられ、
のちに、「ふ(膚)」の音に変化した。
とおっしゃるのは、なんだか、
漢字の研究というのは、どこまでの文献や資料によって
成り立っているんだろう? と思えば、
気が遠くなるようにも感じるけれども。
古い詩において、「胡」や「余」の字と
韻が合わされているので、
【膚(盧)】は「ろ」という音で、
それが、「ふ」の音へと変化した。というのは、
うまく言えないけどおもしろいなあ。
詩を、
そのような視点から、つまりはさ、
字面や意味から読むのではなくて、
「音」から読む、って、
いいなあー。
そして、また、
「完膚無きまで」という語句での「ぷ」は、
皮膚の【膚】だったのね。
それは、これまで考えたことなかったな。
「完膚」とは、完全な皮膚、つまり、
「傷のない箇所」のことで。
「完膚無きまで」とは、
「完膚」のような「傷のない箇所」が
ひとつもないところまで、という意味から、
「徹底的に」なのかぁ。
ともすれば、ぼくが想像していた以上に
凄まじい暴力的のことばだった。
このうすい「皮【膚】」が、
どうか、いつのときでも、
完膚でありますように。
令和3年11月17日