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2000字くらいのお話

これは、 #みんなの2000字 に参加するための記事です。なので内容はあんまり気にしてはいけない。

『プロポーズ』

 待ち合わせ場所を駅の大きな時計の下にしなくて良かった。まさか待ち人が正装で来るなんて想像もしていなかったのだけど。普通の人間が恥ずかしくて出来ない振る舞いが平然と出来る男だとは知っている。けれど、それは任務という大義名分ありきの話。まさかプライベートでも同じように振る舞うとは思いもしなかった。私は金曜日のアフターファイブを秋めいた街で過ごすだけのつもりだったから大してドレスアップをしていない。カフェで待ちぼうけていた私の腕を掴み上げて「店を変えよう」とだけ男は言いカフェから私を連れ出し、エレベーターホールに着くと高層階直結エレベーターの▲ボタンを押す。どこに連れて行くつもりなのか訊ねたけれど答える気はないらしい。ただ、最上階のボタンを押したので展望が自慢のレストランを予約したようだとは分かる。そこで私はようやく数ヶ月前この男に問われた理想の求婚シチュエーションを実現するつもりだと気づく。あんな冗談なんて真に受けることでもないのに。とはいえ今更予約をキャンセルするわけにもいかない。

 最上階に着いたエレベーターが開く。大理石貼りのフロアをヒールが叩いて響く。フレンチレストランの扉の先でウエイターが恭しく出迎える。案内されるままに席に進めばそこは全体より三段高くしてある窓際の二人席。笑えるくらい豪奢に演出された舞台そのものとしか言いようがない。今から私たちはプロポーズという劇を上映するしかないようだ。もちろん私はここで台無しにしてやろうなどとは考えていない。けれど、脚本通りに演じる気もない。何故なら私は本来この男の監視下に置くことを条件に執行猶予を与えられた身であって、愛し愛されて妻の座に収まる身ではないのだから。ソムリエがワインのリストを提示する。私は一言「お任せします」とだけ答えて微笑んだ。

「サプライズは好みじゃないのだけど」「安心しろ。フラッシュモブは無い」「そういう問題ではなくて、」「じゃあどういう問題なんだ?」

 どういう問題かと問われて言葉に詰まる。私はこの男を愛している。そしてこの男は私が愛おしくて仕方ないらしい。つまり双方今の状態を幸せに思っている。けれど、私はいつか執行猶予を過ぎたら手放されるべき身だ。この男の傍らにいるに相応しい女は幾らでもいて、少なくとも私ではない。私はこの男を幸せに導く存在にはなれない。だからプロポーズを受け入れるべきではない。

「考え込んでいる顔だが、そんなに深刻な話じゃない。一緒に居たいと思ってくれるなら俺が死ぬまで一緒にいろ。そうじゃないならそれでいい」「簡単に言わないでちょうだい!私は、」

 こんなところで泣くわけにはいかない。けれど磨き上げられたガラス窓に映る私の顔は滑稽なほど泣くのを堪えている顔で。男は何も言わずにポケットチーフを引き抜き差し出す。

「俺は二人でなら幸せに生きられると思っている。だから改めて求婚がしたかった。式も二人きりでやろう?ウエディングドレス姿、きっと世界一きれいだから見てみたい」

 思い出した。この男はそういう歯の浮くような口説き文句を真顔で言える精神性の持ち主で、あの日過ちを犯した私は「一緒に生きよう」と差し出された手を取ったのだった。あのときもう結末は決まっていた。

「……誰も呼ばないなら通信電波の届かない離島で挙式しましょう?ほら、あなた何かあるとすぐ呼び出されるでしょう?」「そうだな。ハネムーンくらいゆったりしたいもんな」

 それから数ヶ月後、私たちは南国の離島で挙式をした。といっても誰に誓うわけでもなく、ただ二人で一緒に生きていこうと決めただけ。写真も自撮りをしたり互いに撮りあったりしただけ。それでも美しい浜辺でウエディングドレス代わりの白いマキシ丈のワンピース姿で被写体になった私は幸せそうだった。ハネムーンの一週間の休暇を得るのはとても困難だったけれど、男は得意の交渉術で上司相手に戦い、休暇を勝ち得た。

「幸せだなぁ」「ええ、とても」





 結論。noteにスマホ打ちで小説書くのは無理!書き辛ぇ。あと行変えするとだいぶ隙間空くのどうすればいいんですか?やっぱりスマホ打ちに適さないのかな?まぁいいや。上記の小説は別名義でpixivに上げてる変な小説の後日談です。本編一向に進まないんだけどね!とりあえず2000文字書くのはしんどい派です。PC版表示にしてリアルタイムで文字数数えながら書いているんですが、1800文字をやっと超えた程度でくたびれています。やっぱり長文書くの得意じゃないんだなぁ(´・ω・`) 期末レポートとか割とすんなり規定文字数書けたし、優いただけることもしばしばあったので過信していました。やっぱり0から考えて文章書くのは難しいですね。

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