見出し画像

『プレイボール2』は完結したけど、終わりではなかった


 コージィ城倉 / ちばあきおの『プレイボール2』を愛読していた。しかし12巻で最終巻だという。私は読み終えてしまうのがどうにも寂しく、先日までコミックスを買ったまま棚に置いていた。12巻で完結…。つまり打ち切りなのだろうか…。谷口は甲子園に結局行けなかったのか…などと、つらつら考えていた…。

『プレイボール』を読み終えてしまうのは辛いが、意を決して、ついに棚の本に私は手を伸ばした。
 これで谷口くんともお別れだ、とかなり強い気持ちで読み進めた気がする。

 ドラマやマンガなどを読み終えて、観終えてしまうのが辛くて、最終回はいつまでも見ずに取っておきたい、というような気になることはないだろうか…。あまりに好きなので、読み終えるのが辛いのだった。煮え切らぬが、どうしてもお終いにしたくないのだった。

 コージィ城倉氏の漫画はどれも面白いので『プレイボール2』の連載開始時には文字通り歓喜雀躍して、お知らせのウェブサイトなどをじっと長い間、見返し続けたりしてしまった。

 コージィ氏は谷口くんの活躍を描き続けてくれるものと思い込んでいた。
 しかし読者の支持が少なければやはり連載を続けるのは難しいのだろうか、と『プレイボール2』完結の知らせを目にしたときには思った。

 そのため、墨谷高が夏の地区予選大会で試合中のまま、ちょうど11巻で私は読書を中断していた。
 墨谷高キャプテン、谷口タカオは高校3年でこれが最後の夏の大会なのだった。
『プレイボール2』が12巻で完結、ということはついに谷口は甲子園に行けない、ということなのだろうか。

 私は谷口の最後を見届ける気で、コミックス単行本を手に取った。『キャプテン2』の連載はあるけど、そちらは中学の、近藤たちの話だし、もう谷口くんとはお別れだ、なんという悲しさだ、とやや大げさだが、思いながら読んだ。

 墨谷高は予選大会でやはり負けてしまった。

 私は『キャプテン2』は1巻だけ買って、それ以降は読み進めていなかった。やはりどうしても谷口タカオの活躍が気になるのである。

 ついに私は『プレイボール2』を読了してしまった。
 最後のコマに気になる一言が書いてあった。「この物語は『キャプテン2』に続きます。」

 私はまさかと思い、調べてみるとどうも谷口タカオは『キャプテン2』にも登場するようだった。

画像1

 谷口くんは墨谷高の野球部監督になるのである。
 なんという物語の展開だろうか。コージィ氏の発想には驚きながらもやはり喜びの莞爾たる笑みを堪え切れないのだった。
 
 墨谷高には墨谷二中の歴代キャプテン、丸井、イガラシ、近藤が揃い、野球部監督として谷口タカオが彼らを率いるのであった。

 予想もしない展開に私は一気に『キャプテン2』の続刊を買って一晩で読んでしまった。

 谷口に好意を寄せる女子予備校生の父親(高校野球ファン)のセリフ「谷口タカオ、ありゃあ真の男の中の男よ!」

 コージィ城倉の『おれはキャプテン』『ロクダイ』『砂漠の野球部』などを夢中で読んだ身としては、これからの『キャプテン2』も楽しみで仕方がない。

 ちばあきおの『キャプテン』では谷口、丸井、イガラシ、近藤たちの野球に対するひたむきな姿に読者はひたすら胸を打たれるのであった。
 
 私事だが私も幼年期から、ちばあきおマンガで育った。『キャプテン』の作者が自ら命を絶ったと聞いたとき、子供心にどうにも信じられなかった。谷口タカオは永遠にいなくなってしまったのかと思った。

 私にとって『プレイボール2』の連載をあのコージィ城倉が開始すると知ったときの喜びと期待はそれはもう、相当なものであった。
 アマゾンのレビューなどには心無いことが書かれているようだが、気にしなかった。これは僥倖である。
 自分の尊敬するマンガ家2名の共演である。
 ちばあきおのキャラクターたちの続編をコージィ城倉が物語るのである。
 これが面白くないわけがない。
 
 これまでの、ちばあきお『キャプテン』全26巻は壮大な「第1部」で、これからまたコージィ版の『キャプテン2』、長大な第2部が始まったのだと思いたい。

 墨谷高野球部、谷口監督の甲子園での活躍はどうしても読んでみたい。
 コージィ氏の『ロクダイ』は未完だが、谷口タカオの大学野球編もいつかは読んでみたい。

『プレイボール2』や『キャプテン2』では谷口が父親と特訓した「近くの神社」が何度か印象的に描かれている。

 コージィ氏のちばあきお氏への深い理解と愛が漫画全編に溢れている。

 不動の名作『キャプテン』の続編を描くプレッシャーは並大抵のものではないのでは? と、どこかの記事でインタビュアーがコージィ氏に質問していた。
 「自分は頭のねじが数本抜けてるので」と(いうような意味のことを)氏は飄々と語っていた。コージィ氏もやはり谷口タカオのように「真の男の中の男」なのかもしれないと思った。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?