間違えがちなフランス語 5. 時制編(マガジン版)

「フランス語は難しい」というイメージが強いですが、これはある意味では正しく、ある意味では間違っています。

なぜ間違っているか?それは、どの言語も等しく難しいから。あるいはより的確に言えば、言語の難しさは比べられないからです。
言語は人の生活様式、文化、つまり生きることそのものを映し出しています。人生の難しさを比べられないように、言語の難しさもまた、どちらがどちらより難しいとは簡単には言えません。

ではなぜ正しいか?それは、フランス語にも当然難しいところがあるからです。たとえばA語はB語より発音は簡単だけど文法が難しい、というように、何が難しいかは言語によって異なります。

よってこのようにポイントを絞ればある程度、言語の難しさも比較することができるわけですが、「フランス語の難しいポイント」の一つが、何を隠そう「時制」なのです。たしかに日本語と比べても英語と比べても、フランス語の時制はハードルが高く感じられます。ただ、実は思っているほど難しいものでもありません

一つ一つの時制の違いを整理していえば、必ず理解できるようになります。

点と線の落とし穴

フランス語の時制は難しい、と感じてしまう理由の一つが、用語のわかりづらさだと思います(時制に限った話ではないのですが)。
たとえば「複合過去」と「半過去」、この二つの過去形の使い分けはフランス語学習者の永遠のテーマですが、名前だけを見ていても何一つピンと来ません。

それもそのはず、「複合過去」と「半過去」では名称の成り立ちがまったく違うのです。まず、「複合過去」はフランス語では "passé composé" と言います。これは読んで字の如く「 組み合わさった (composé) 過去 」という意味。では何を「組み合わせる」かというと、助動詞過去分詞です。
フランス語では、英語の現在完了と同じ要領で "avoir" あるいは "être" の活用形に過去分詞を繋げて過去形を作りますが、二つの単語を組み合わせて作るから、「複合」過去なのですね。

対して「半過去」は、単語を半分にするという意味ではありません。この時制をフランス語では "imparfait" と言いますが、これは「不完全な」という意味を表す形容詞でもあります。よって "imparfait" は、その動詞に表される行為が「不完全」すなわち、まだ終わっていないことを表しているのです。「半過去」の「半」はつまり、「道半ば」という時の「半ば(なかば)」に近いニュアンスだと言うことができます。

このように、「複合過去」はその形式上の成り立ちが名前に反映されているのに対し、「半過去」は意味の次元で名付けられています。

ふつう、僕たちは何か似た二つのものを区別するとき、できるだけ同じ次元で比べようとします。たとえば「イヌは喜び庭かけ回り」「ネコはこたつで丸くなる」と言えば、“雪に対するリアクション” という同じ次元でイヌとネコの性格上の対比がわかりやすくなります。
しかし「イヌは嗅覚が優れていて、ネコは魚が好物である」などと言うといまいち違いがはっきりしません。「複合過去」と「半過去」という名称も、言ってみればこのようなズレがあるのです。

そこで救世主の如く登場するのが、「点と線」の対比です。このアナロジーはとても魅力的。なぜなら “図形” という同じ次元で比べているからです。「複合過去は “点” で、半過去は “線” である」と言われるとなんだかわかった気になるし、実際この理解ですっきり区別できる場合も多いです。

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