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アナログとデジタル。

今日は昼過ぎから1人で買い物、夜は友達と飲む予定だ。

1人で買い物の時間も長いのでポケ充と、財布や鍵などを鞄に入れる。
少し鞄の中がもの寂しかったので読みかけの本とTOEICの英単語帳も入れて家を出た。外はいつもより少し肌寒い。

買い物も予定通りに進み、友達とお酒も飲めてとても有意義な1日を過ごせた。

そして、店を出て駅の改札で友達とわかれた。帰りは溜まったドラマでも見るつもりだった。

携帯の残りの充電を確認すると6%、いつもなら焦るところだが今日は充電器を持ってきているのだ。そう思い、鞄から充電器をとりだす。

ここで気づいたのだ。充電器本体はあるものの、充電器と携帯をつなぐ線を忘れたことに。

これが事件の始まりだ。

電車は片道1時間強、支払いは携帯のsuica。

つまり、この6%の充電をなんとしてでも1時間強保たなければならないのだ。
ここで思い出した。幸運にも読みかけの本がかばんの中にあるではないか。

そう思いしおりが挟んであるページを開く。不幸中の幸いならぬ幸い中の不幸とでもいうのだろうか、開いたページから最後のページまで、目測でも40分あれば読み終わる量であった。
くそっ。だが本を読む他になにができるというのであろう。

電車に乗り込み、何もすることがない時間がそこに迫っていることを知りながら本を読み進める。

そんな状況だというのに、本を読み始めればどんどん目が文字を追っていく。

気づけば本を読み終えてしまった。早く読み終えてしまったため所々気になるところも読み返した。

残りの時間は30分ほど。TOEICの単語帳も持ってきていることはわかっていたが、アルコールが血液を巡っているのだから脳みそがそんなものを目に通したいと思うはずもない。

ただ酔いも少し落ち着き単語帳を手に取る他ないのだと、脳みその1部が訴えかけもしてきた。

仕方がなく、単語帳を手に取ってみる。が、やはり英単語は目を通しても脳まで届きやしない。

英単語を空読みしながら退屈な時間を過ごす。さすがに1度や2度は携帯を見てしまった。
しかしほとんどはは何もせずただぼーっとするという耐え難い時間を過ごした。

そんなこんなで最後の乗り換えだ。違う電車に乗り込み席についた。

残りは2駅。

5分ほど。

残る充電は2%。

この長い戦いももうすぐ終わるのだ。僕はこの戦いに勝つんだ。

最後の力を振り絞り、遂に、最寄りの駅に着いた。改札を出る駅に着いたのだ。

もう余計な充電は使わせまいと電車を降りて改札の手前まで携帯に電源を入れることはしなかった。

そして改札手前、恐る恐る携帯を開く。

明るさからは力は感じないものの、残り1%の状態で耐えてくれていた。

勝った、勝ったんだ!
この長い戦いに勝ったんだ!

携帯と喜びを分かち合おう、
suicaの決済の画面を開き、
改札と勝利のハイタッチを交わす

ピーーー。


ん?
携帯の画面をもう一度見る。

『残高不足』。

この文字を僕に見せると同時に携帯からの返事はなにもなくなった。

ゲームオーバーだ。

負けたんだ。

この戦いに惜しくも負けたのである。

なんとか繋いだ充電もこんな形で無くなるなんて。
ポケモンならここで目の前が真っ暗になり、お金を払って気がついたらポケモンセンターにいるのだろう。

だがしかし、不幸なことにそのお金も財布からは出てきやしなかった。

決済はカードかPayPayで済ませる僕にとって、財布にはお札が入っていればいい方だ。

ここで思った。

ただ残りの充電との戦いに負けたのでは無い。これはキャッシュレスが負けたのだ。

キャッシュレスがキャッシュレスの限界に負けたのだ。

最新の技術とは言えど、キャッシュレスには充電という限界がある事を実感した。
それもこんな劇的な形で。

あぁ、明日からいくら財布に現金を入れてでかけようか。

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