見出し画像

情けも競馬のうち

第81回皐月賞ではじめてGⅠ騎乗を果たす嶋田純次。今年は騎乗するアサマノイタズラで勝った1勝。昨年5勝、19年3勝、18年5勝。まさにどん底でつかんだクラシック出走だ。

「俺の人生にも一度くらい、こんなことがあってもいいだろう」

藤波からWWFインターナショナルヘビー級ベルトを獲った長州力の名言のごとく、嶋田の騎手人生にだって、報われる瞬間があってもいいじゃないか。

昨年は牡牝ともに無敗の三冠馬が誕生、古馬はアーモンドアイ、グランアレグリア、クロノジェネシスと強い馬が強い競馬をして勝った。それは悪くもなんともなく、日本の競馬のレベルが将来、さらに上がっていく契機になるだろう。ルメールや川田、福永、松山が勝つのはそれは納得だ。努力と経験があっての結果。ひとつも異論はない。

だが、だけど、嶋田が夢を見たっていいし、彼が一発栄光をつかみとるのもいいじゃないか。GⅠ初騎乗、経験はない。49歳で病に倒れたお父さんとの約束「GⅠを勝つ」。おじさんは、そういうのに弱いんだ。普段はデータ派だが、どうにも昭和と平成を生きた血が騒ぐ。浪花節も美談も昭和の風景かもしれない。令和はそんな時代じゃないかもしれない。でも、それを果たすチャンスが来たっていいじゃないか。チャンスぐらいあげてくれ。

アサマノイタズラはそんなチャンスだ。ポイントは4着に敗れた水仙賞。春の中山開幕週は絶好の高速馬場だった。勝ったレッドヴェロシティは出走していないが、2着マカオンドールは大寒桜賞勝ち、5着シャイニングライトは山吹賞2着、8着テンカハルはアザレア賞3着、11着ルーパステソーロは1勝クラス平場で3着。地味ながらレベルは高かった。1000m通過1分5秒0の超スローではあったが、最後の600m11.8-11.2-11.5、中山で11秒台連発は展開だけでは出ない。アサマノイタズラはそのレースで4着で道悪のスプリングS2着。不向きな良馬場の瞬発力勝負で4着、時計がかかる競馬で2着。力がなければできない。そして土曜日に中山は雨が降る。馬場は嶋田とアサマノイタズラに味方する。初角で激しくなる位置取り争いを回避できる外枠もいい。

やるなら今しかない。嶋田だってデビュー当時は18、18、21勝と順調な滑り出しだった。いつの間にか差がついて11年目。人生最大の一発逆転ゲームに乗ってみたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?