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【ヴィクトリアマイル】あれもマイル、これもマイル。どれもマイル

大型連休恒例となった大移動の波に揺られ、森へ行った。森林浴なんて言葉、生涯縁がないとどこかで決めていたが、そんなことはない。年のせいか、森の静寂に身を沈める心地よさにすっかり魂を奪われた。音がいい。自然が奏でる音楽は人がかき鳴らす生活音とはまるで違う。もちろん、人の営みとは生そのものであり、生活音とは人間が生きている証だが、まったく違う周波数が森にあった。こういう経験を特別なものと感じてしまうのは、都会に生きる人間の哀しみでもある。とにかく往復渋滞だらけ。よくもまあ、これだけの数の車が同じ方向へ向かうものかと。5月の大型連休は殊更一斉休暇になってしまうため、壮絶ですらある。ズラせばいいとは言うが易し。休みをスライドしたくてもできない事情もまた同じ。諦めるよりほかにない。なんでも言うが易しだ。

大型連休の最初と最後はほぼ決まって中央競馬の開催日。ただでさえ気を遣う輸送にあの渋滞が重なるかと思うと、関係者の心労も人一倍だろう。首都圏は圏央道などいくらか便利な道ができはしたが、あの渋滞では空いている道を探す方が難しい。どの高速道路も大抵は料金所が渋滞のきっかけになる。ETCがこれだけ発達したいま、料金所という形態はやめ、通行するだけで課金するような仕組みを作れないものか。ゲートを選び、バーを通過するのに徐行したのでは、やはり車の流れは滞ってしまう。

あまりの交通渋滞に前置きが長くなってしまったが、大型連休明け最初の週末は母の日であり、ヴィクトリアマイルが行われる。傾向としてはGⅠ馬は特殊ローテでも走ること。ここ4年はずっとこのパターンだ。ドバイ帰りのナミュールが走ってもなんら不思議はない。しかしながら、ナミュール本命は毎度のことながら、当方以外がやってくれるので、あえて打たない。非GⅠ馬が勝つなら、定石通りの前哨戦組。それも阪神牝馬Sが圧倒的に強い。阪神牝馬Sが1400mから1600mに変更されてからは3-3-4-47。8年間のうち、直近4年はGⅠの特殊ローテに打ち砕かれはしたが、その前4年で3勝をあげた。もう一つは中山牝馬S7着ノームコア。すがるなら阪神牝馬Sだ。

今年の阪神牝馬Sもそうだが、ヴィクトリアマイルとの関係は直結ではなく、過去8回で阪神牝馬S1着0-1-0-7。2~9着3-2-4-26。逆転が宿命といえよう。なぜこうなるのか。それは阪神牝馬Sのペースが本番と次元が違うからだ。1着馬のうち唯一好走したのは2020年サウンドキアラ。この年の阪神牝馬Sはイーブンペースの力勝負だった。スローの阪神牝馬Sを勝った馬は0-0-0-7とさっぱり。

今年の阪神牝馬Sも超スローの上がり勝負になり、例年通りなら、マスクトディーヴァは無印でいい。秋華賞で2着に来たので、そこまで言いきれないが、前哨戦でやたら強い競馬をするトライアルホースの匂いはある。だったら、2着ウンブライル、3着モリアーナか。いやいやそれではひねり足りない。5着ドゥアイズを狙う。牝馬三冠で好走したのは5着桜花賞で、リバティアイランドと0秒6差。その後も牡馬相手にマイルのオープン2、1着と明らかにマイラーの戦歴。特に洛陽Sは強調できる。前半800m45.5の超ハイペースになり、ドゥアイズに迫った2、3着は追い込み一手。4着ボルザコフスキーですら早仕掛けだった。この激流を6番手から押し切ったドゥアイズは強いの一言。ここまで走れるのは一流マイラーのそれ。阪神牝馬Sは超スローでまったく適性がなかった。それで5着は充実具合を感じる。

スローを嫌いそうなフィールシンパシーがコンクシェルを刺激し、その背後でドゥアイズが持続力勝負を待つ。後ろからくるナミュールやマスクトディーヴァの末脚を削ってしまえ。母ローズマンブリッジは切れ味鈍いディープインパクト産駒だったが、ハイペースに強いルーラーシップの血と混ざり、ドゥアイズにタフさを伝える。母の母サミットヴィルは英国GⅢ勝ち、英オークス、ヨークシャーオークス3着馬。一族にGⅠ勝利を届ける。

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