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【you+】旅のきっかけとなったパスポート

 クリラボEXPOの企画、「あなたを変えてくれた『you+』」。

 四半世紀生きてきた中で、変わったことはそれなりにあるけれど、人に伝えられる話があるかどうか……と悩み、投稿を諦めようとしていましたが、「過去に書いたことのある内容でもOK」という補足をみて参加を決めました。

 私を変えてくれた一番のもの。それは、パスポートです。

 なんのパスポートって、海外旅行へ行くときの、身分を証明するあのパスポートです。

 国内旅行はそれなりに行ってましたが、海外旅行は27歳の時にパスポートを取るまで経験がありませんでした。

 10年パスポートを取得したことで、海外への苦手意識が払拭でき、コロナの流行で気軽に行けなくなるまで数か所の国を回ることができるようになったのです。

 その感動をお伝えするため、以下「旅先での出会い」という記事でも同様の内容を投稿したことがありますが、改めて、初めての海外旅行珍道中を綴らせてください。

初めての海外旅行

 2017年11月。私は無性にオーストラリアへ行きたくなりました。
 理由は二つ。
 一つは、2019年にエアーズロックの登山が禁止になるという報道を目にしたから。
 二つめは、以前、同僚から誘われたときにお金がないことを理由に断ってしまい、ずっと後悔していた場所だったから。
 いま行かなければ、この先もずっと後悔する。早めに計画を立てて、毎月コツコツお金をためていけば行けるはずだ。私はオーストラリア旅行を決めました。
 当時27歳。初めての海外旅行計画でした。

最初のトラブル

 当時のオーストラリア旅行日記は、2018年4月20日から始まっています。
 「無事につきました」という書き出しに、「ケアンズ経由でエアーズロックへ行くという行程だったのですが、まさか空港の国際線と国内線があんなに遠いとはね」という愚痴めいた呟きが続いていました。
 そう、成田空港からケアンズ国際空港へ行くまではよかったものの、ケアンズからエアーズロックリゾートへ行く国内線の乗り継ぎに失敗したのです。
 言い訳をすると、空港に着いてから拙い英語で二人の人に尋ね、念入りに場所を確認していました。二人とも「右に行け」としか答えなかったし、
実際、ゲートを出てすぐ右側にチェックインカウンターが見えていたのです。
 到着時刻は朝の5時。人は誰もいませんでした。乗り継ぎまで2時間あるし、そのうち開くだろうと友人と二人、売店でソーセージサンドを買って食べながら待つことにしました。

 が、搭乗予定時間の20分前になってもカウンターが開かない。
 これはおかしいとようやく気付いて、もう一度、偶然通りかかったアロハシャツ姿の職員に国内線の場所を尋ねたところ、「国内線は外を出て右に10分ほど歩いたところだ」と告げられました。搭乗予定時間は15分をきっていました。
 10分かかるところを走って5分で到着し、国内線受付カウンターで「この便に乗せてください!」とチケットを見せてお願いしたら、係の人も焦った顔で「こっちだ! 来い!」と走り出しました。行く先々で「荷物を置いて! 危険物なし、オッケー!」「チケットこれね! この道まっすぐ!」「もうチケット見せないで良いから、はやく乗れ!」と大玉送りの玉のようにいろいろな人に助けられながら運ばれ、なんとか予定の便に搭乗することができました。
 つまり、正確には乗り継ぎに【失敗】はしていません。
 しかしオーストラリア到着初日にして、「excuse me」「I'm sorry」「thank you」の3つがいかに大切な英語か、身に染みてわかりました。

ロストバゲージ

 海外旅行の怖い話としてよく耳にするのがロストバゲージ、荷物の紛失です。
 空港で荷物を預けた時に発生しやすいと聞いていたので、私も同行者の友人も機内持ち込みだけで済ませていました。
 しかし、ロストバゲージは起こったのです。
 エアーズロックリゾートに着き、無料のシャトルバスでホテルまで運んでもらったのですが、バスの荷物置き場に預けていた友人のキャリーケースがなくなっていたのです。私たちの利用したホテルは格安のため、リゾート内の最奥。なくなったとしたらその前にいくつか停車したホテルの中のどれかです。
 シャトルバスの運転手にお願いして、私と友人の二人だけを乗せたバスは、再び空港との間にあるいくつかのホテルを回りなおすために走り出しました。
 結果的に、友人の荷物は無事見つかりました。
 最初のホテルで誤って下ろされていたのです。
 同じバスに乗っていたホテルの利用者はみんな自分の荷物を持って中に入っていたので、友人の荷物だけがホテルの前にポツンと置かれていました。
 荷物を誤って下ろした運転手は、大きな声で私たちに謝り、そしてハグをして別れました。オーバーなリアクションの全てが新鮮でしたね。

旅先での出会い

 3泊5日の短い旅だったが、たくさんの思い出ができました。
 むしろ期間が短いからこそ、思い出が凝縮された気がします。
 空港の乗り間違えも、ロストバゲージも、どちらも初日のエピソードです。
 ちなみに荷物はもう一度なくなりました。
 これは完全に私たちのミスなのですが、2日目、オプショナルツアーの終了時間とホテルのチェックアウトの時間を確認せずツアーに参加してしまったため、ツアーが終わってホテルの部屋へ帰ろうとしたら、「チェックアウトの終わった部屋への入室は認められない」と断れたのです。部屋に荷物を置きっぱなしだったのに。
「清掃には入ったのか? 私たちの荷物はいまどうなっているのか? わからないなら自分で確認するから部屋の鍵を貸してくれ」
 知りたい情報を聞き出すのも、思いを伝えるのも、言語の壁に隔てられるとこんなにも難しいのかと思い知らされました。数十分拙い英語でやりとりして、最後は粘り勝ちで鍵を借りて部屋に戻りました。荷物は部屋にそのまま残っていました。

 便宜上ホテルと書きましたが、格安のため実際はコテージタイプの部屋です。扉の下は隙間があいていて、夜中に8センチくらいのゴキブリが入ってきて、大騒ぎで格闘したのも、今では良い思い出です。

 私たちはエアーズロックリゾートに1泊、あとの2泊はケアンズに宿を取って観光しました。
 ケアンズのホテルは、下着のうえにカーディガンだけを羽織った、海外アクション映画で銃をぶっ放しそうな貫禄のある女性が管理人だったのが印象的でしたね。
 気怠げに「これ、部屋の鍵。朝食はここ。何か質問は?」と言われ、「プールは何時まで入れるの?」と聞いたら「anytime」と返されました。すぐ横にあったプールの門にははっきりと「8:30-19:30」と書かれていたのに。テキトー具合が本当に心地良かったです。

 最後に帰り乗った空港までのタクシーでは、私が料金20ドルのところを25ドルと聞き間違えて渡したため、「おい、多いぞ!? いいか、見てろ。10…20…3.4.5!ほら多いだろ? 俺じゃなかったらボラれてるぞ! 気をつけな!」と運転手が叱りながら5ドルを律義に返してくれたのが思い出のひとつとなっています。

海外旅行のハードル

 海外旅行へ行ったことのない私にとって、海外は危険なところという印象が強くありました。
 実際、この初めての旅でも何度も危ない橋を渡っていますしね。いまは笑い話にできるけれど、その時は肝が冷える思いをしました。
 どうにかなったのは、日本人観光客に慣れたケアンズやエアーズロックの人たちだったからというのも大きいでしょう。
 しかしこの旅を通して、私の海外旅行に対するハードルは格段に下がりました。
 コロナ禍に至るまでの間に香港、ニューヨークと毎年のように海外旅行へ行くようになったのは、このオーストラリア旅行の経験があったからです。
 コロナの流行がなければ、ボストンで開催を予定していたムービースターの握手会にまで参加しようと計画していたのだから、ずいぶん度胸がついたと思います。
 海外旅行は注意しなければならないことがたくさんあります。
 観光ではそれほど困らないけれど、トラブルが起きたときにはやはり言葉の壁の分厚さを痛感させられますし。けれどそれすら、行ってみなければ分からない。
 あの時、勇気を出して旅行へ行く決断をしてパスポートを手に入れたから今の私があるのです。

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