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写真活動

もう飛んでしまって、使う予定がなくなった撮影小物がトクトクと届く

「ピンポーン」とチャイムが鳴り

にぎったドアノブ「あっつっっ」から、外のヤバさが伝わる


ドアの外には、

Amazonダンボールを抱えた若い女の子

肉体労働の似合わない青白い表情には、真珠みたいな大きさの汗玉がにじんでいる


軽く会釈をすると、荷物をそこへ置き、足早に去っていった

サインをする必要もない


なんだかコミュニケーションの虚しさを感じて、「サインをする必要もない」と口にしてみる。

いざ音にしてみるとなんともバカらしい言葉だ


Amazonダンボールを開けてみるとそこには、数週間前に撮影コンテと一緒に用意した小物が溢れていた


コロナを乗り越えよう、なんて誰でも考えそうな退屈なお題に、なんだかそこに出口があるように、そこにしか出口がないように感じて、とにかく明るい気持ちになるグッズを揃えた


撮影は午前と夕方

光の向きが大きく変わる時間帯に、小物で少しだけ印象の光を曲げて映す

シャボンの透明な玉が太陽の光を七色に分けてくれる。こんな使い古されたギミックなんて、あくびが出そうだが、


たまたま目に入った鏡の中のぼくは、
鋭く真面目な眼をしていた


いつでも最後の撮影になる、と、
いつでもこれが最後で、これ以上の最高はないと、振り絞っていた。


うまく撮れなければ、うまく撮れるまで撮り散らかした。

そこにあるはずのものが、撮れていない。
しかし、まだ

しかしまだそこに

かならず........ある


あるから!

撮る!!必ず!!!

あるから!!!

みえてるから!!

撮るから!、

撮るから!!!!


乾いて鈍い痛みを眼の辺りに感じる。

1000枚にもなる写真をカメラ握って、ポジチェックをする。


これいいね

これもいいね

すごいのあるね


耳に声が入るたび、小さくうなづく


最後の1枚

真っ黒の画面に、ぼくの顔が映り込んでいた

その表情は眼を真っ赤にして笑っていた


水滴の落ちる音が、ちかくかすかに聞こえる

ドアの外で大人たちが慌てている声が聞こえる


手首とカメラ

冷たい水が

赤く染まっていく


黒い深い穴に吸い込まれるように眠い


ぼくは

撮れたのかな?



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