読書メモ『本の声を聴け-ブックディレクター幅允孝の仕事-』p253

 こうした紙の本の持つ魅力、本という「物」が備えている重層的で多様な価値を、幅はよく分かっている。
 「僕は紙の本を選ぶとき、装丁や印刷などの、紙の手触りやインクの香りなどにも気になる性質なんです。人間が人間が身体ベースで活動を続けている以上、実存感のある紙束のほうが、人間との近さや確からしさを感じさせるものであるということはしばらく変化しないでしょう」
 本は、そこに書かれた内容=テキストだけでなく、それが印刷された紙の種類、印刷している文字、書体、表紙、装丁、紙の束の綴じ方といった多くの、長い時間継承されてきた技術の集積体でもある。

高瀬毅『本の声を聴け-ブックディレクター幅允孝の仕事-』p253

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