伝えたかった思いが180°裏返しになって伝わってしまった映画。 ドラゴンクエスト ユアストーリー

後半特にネタバレ感想なのでご注意ください。
 
今回一番燃えてる原因って、なんでドラクエでこれをやったんだ。ドラクエじゃなきゃだめだったのか。ってことだと思うんです。
僕は、ドラクエじゃなきゃダメだし、ドラクエの世界をあれだけしっかり再現できる技術や演出が無ければ、あの結末の衝撃は生み出せなかったと思います。
その上で、大半の人が見たかったドラクエ5の映画化はアレではなかっただろうなというのは、もちろん理解しています。
僕は、映画として良くできていたし、ゲームそのままのストーリーをベースにしただけの映画を2時間弱に纏めたら、あんまり話題にもならず白組のCGはすごかったなというだけの映像体験になってしまっていたのでは?とも思いました。

これは映画内でも語られていますが、RPGゲームって自分が冒険したような体験が大事で、ドラクエは本当に冒険したんだっていう思い出として、多くの人に残っているゲームだと思うんです。特にドラクエ5はリメイクの数も多く、いろんな世代の人が楽しんだ経験がある。
だからこそ、それが日本で最高峰の3DCGで追体験できることを楽しみに、映画を観に来た皆さんがいて、裏切られたと感じる皆さんがいた
ただ、RPGゲームって道中の冒険も大事で、どうやってボスを倒すのか工夫したり、そのためにレベルを上げたり、その数十時間の体験が全部クリアの読後感にかかってきていて、映画にまとめるとどうしてもダイジェスト感が出てしまうところはあるし、今回も実際に出てしまっていたとも感じました。
ただ、そのダイジェスト感の中で、今回のユアストーリーの世界観の表現は物凄く良くできていて、キチンとワクワクできていたし、だから最後の瞬間にとてつもない衝撃と感情を起こすことができたのだと思います。



ここから完全ネタバレです。




この映画の最後では、
自分の思い出や生きる世界を否定して壊そうとするやつに対して、誰がどう思おうと自分たちの中では大切な世界で現実なんだ。
という意思で打ち勝つ。

映画上では、コンピューターウィルスが物理的(ソフト的にですが)に世界を壊しにきますが、演出としては思想と言葉でゲームの世界やそこに熱中する人を攻撃していたように感じました。
だからこそ、せっかく楽しみに思い出のドラクエ5の映画を観にきたら、その思い出とここに楽しみに観にきた気持ちを否定されたようで、耐えられない。拒否反応が起こってしまって、後の展開とかはもうどうでも良くなってしまう。これが起こったことの全てでしょう。
本当はそれを乗り越えていく映画にしたつもりで、鑑賞後にはそうだよな誰がなんと言おうと思い出の冒険は忘れないし自分の宝物なんだ。VRで本当にリアルにドラクエを追体験できる世界が楽しみだな。と感じてもらうはずだった。が、そのメッセージは届いていない。

作品でメッセージを届けることの難しさ、繊細さが現れた結果だなと思います。

作る側の人間は鑑賞者になる時でも、作品をきちんと理解して自分なりに噛み砕いて、この作品の本質はなんだったのかということを考えがちな傾向にありますが、本当に純粋な鑑賞者はもっと表面的に作品を捉えていて感情で受け取るし、一番最初に得た感覚に引きずられるんだと思います。自分の大切な世界を壊されたらそこから数分で立ち直ることは出来ない。その感覚のズレが今回一番大きかったのかなと。

実際この映画では、実際メタ的発言を伏線で取り入れてましたし、子供時代をあえてSFCチックに流したのは、最初はいきなり3Dの世界に入って世界の再現に引き込むための展開かと思いきや、きちんと意味があったり、YOUR STORYとあえてRを裏返しにしたのも、あなたの物語とその裏側という意味があったのかな?と思えたり、きちんと結末に向かった丁寧な組み立てがされています。ちゃんとしてるんです。
だから、こんなに丁寧に自分を否定してくるって、なんの嫌がらせだよ?と感じてしまうのではないでしょうか。クソ実写化は2点でも、ユアストーリーはマイナス1万点と。

誰しもが強い言葉をどこかに発したり、それこそ自分のスキルを悪意を持って使ったり。そういうことが出来る時代に、悪意の有る無し関わらず自分が愛していた世界を壊すような言動に出会うことは沢山あるはず。
そんな時に、自信をもって自分の思い出と好きな世界を馬鹿にするなと。その世界を信じ続けると思えるようになる映画だと、多くの人に伝わったら本当に良かったのになと、僕は思い、長文でお届け致しました。

ここまでお付き合いいただいた方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございました。

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