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顔なき友(2018)

またシャツに穴あけましたね寝たばこの癖は千年直さないまま

ネクタイが互いの首を締め付けるリボンであれば可愛きものを

我が肉はエヴァンと呼ばれ桃よりも林檎よりも瑞々しく赤

本当のくづれゆく輪は花のよう にしゃりと亡ぶ時を高めて

命の夜 翁の腕は盤石の時をつぶせりひとはかげろう

諦念の夜こそ駆けよと教えたる師の眸( め) 破獄のごとく瞬く

光への不信を超えて探さねばならない時層を掘削せしめ

顔のなき友に遺影も籍もなし朽ちて戸惑うからだの素描

尽きし月おまえはいいな見えなくて寂しがられる愉しさだろう

来世ではシュガーポットに棲んでいたい水気がないから焦らんでいい

破滅って怖くはないなともだちがずっと近くに居るよな感じ

痛がりを暗喩で責めるくらいなら血が出るくらい殴ってくれよ

味噌汁のたまねぎ甘いと言い合えば倒けつ転びつ暮らしが戻る

吐くほどに外連味もねえ宵街の獣がおらぶ悪い子ここだ

大鍋に業を煮炊きし骨掬う納屋の開かずの戸は叩くなよ

水中の月も文色(あいろ)も無き夜は雪の明るみにこそ目覚めて

片愛を時獄の底までみちづれに死んだ男が寝てるじゃないか

拭えども我が形代は雨ざらし戸口に顔のない客が立つ

我が欲をあつめて捏ねし人形と友の寝顔を見比べてみる

路頭に迷う子へとあなたが微笑めばこの世で最も醜い眺め

どこかしら心の在り処 背骨より手前にはもうなにもないのよ

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