「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑦
翌日、学校に現れた篤久は、ある意味クラスの話題をかっさらっていた。
「おはよう」
にこやかに挨拶をしているが、両手の指、全十本に包帯が巻かれていて、とてもじゃないが正気とは思えない。周りが心配するものの、本人は「なんでもない」と笑っている。
怪我ではないことを知っているのは、僕だけだ。あの包帯の下には、赤い糸がぐるぐると巻かれている。小指だけでは足りないくらい、好みの女子が多いということだ。
「おはよう、あっくん」
美希が彼氏の登校に気づき、スカートの裾を弄