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【note創作大賞2024】「ごえんのお返しでございます」

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note創作大賞2024参加中の「ごえんのお返しでございます」をまとめています。 スキやSNSでの拡散、ありがとうございます。応援よろしくお願いします。
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2024年5月の記事一覧

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」②

 糸屋って知ってるか?  駅までの道のりをゆっくりと歩きながら、篤久の話を聞いた。 「糸…

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」③

「ただいま」  商店街を抜けたところで、篤久とは左右に分かれた。あの不思議な店以外に寄り…

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」④

「おはよう」  約束をしているわけではないが、部活をやめた篤久とは、登校時間もよくかぶる…

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑤

 縁結びのおまじないをした翌日から、都合よく美希と仲良くなれるなんて、そんなうまい話はな…

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑥

 糸屋に行ってから、一週間が経った。  放課後、僕の近くに寄ってきた篤久は、頭がお花畑状…

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑦

 翌日、学校に現れた篤久は、ある意味クラスの話題をかっさらっていた。 「おはよう」  に…

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑧

 刺したり刺されたり、殺したり殺されたりする覚悟があれば、ハーレムはつくることができるらしい。  本当だろうか?  考えてみれば、ハーレムや後宮は、権力者のための施設だ。イスラーム帝国のスルタンしかり、日本や中国の帝しかり。  美しい女性が集められ、権力闘争の舞台となる。ときには、身分が低い女性すら、その美貌ゆえに誘拐同然で連れてこられることすらある。妃と奴隷は紙一重だ。  主が無能だと、後宮での争いは激化する。虚構の話だけど、源氏物語のことを思えば、「ああ」と納得で

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑨

 五月の最終日。もうほとんど夏ではないか、という気温の中、僕は遅刻していた。  寝坊では…

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑩

 聡子は逮捕され、篤久も、学校と警察の両方から事情を聞かれた。  刃傷沙汰を起こした聡子…

「ごえんのお返しでございます」2話 紅薔薇、白百合①

 曇天の梅雨空は、低く感じる。頭のすぐ上に、分厚い雲が重くのしかかってきて、あまり好きで…

「ごえんのお返しでございます」2話 紅薔薇、白百合②

 次の日、僕はいつもよりも早い時間に家を出た。相変わらず、「行ってきます」に応じる声はな…

「ごえんのお返しでございます」2話 紅薔薇、白百合③

 放課後、部活も何もしていない僕は、まっすぐ家に帰るのが常だが、今日は違った。  商店街…

「ごえんのお返しでございます」2話 紅薔薇、白百合④

 美希たちは、相変わらず教室の中心になっていた。  今は、終業式前日の球技大会の話で盛り…

「ごえんのお返しでございます」2話 紅薔薇、白百合⑤

 とうとう、見つかってしまった。 「あれ、紡くん?」  総合玄関から入って西棟へ向かう途中、冴木医師に声をかけられた瞬間、足が竦んだ。 「今日はどうしたの?」  医者だから、なのか、彼だから、なのか。冴木は僕のことを上から下まで観察し(なんなら目をライトで照らされそうにすらなった)、どこも悪いところはなさそうだ、と首を傾げた。  別にやましいことはしていない。なのに、彼への苦手意識が、自然と手を前で組んで、腹をガードする姿勢をつくる。  そっぽを向いて、「友達の見