#読書録 ざっくり分かるファイナンス

書名
 ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務

著者
 石野雄一

ポイント
 財務会計は外部に報告するための会計。管理会計は経営者あるいは経営管理者が企業経営に利用するために利用する会計。
 
 資金調達の方法。有利子負債による調達と株主資本(株式発行)による調達。有利子負債は銀行借入と社債の二つに大きく分けられ、銀行借入を間接金融、社債と株主資本とを合わせて直接金融という。

流動資産というのは「すぐに現金化できる資産」のこと。「現金・預金」。

固定資産というのは「現金化するのに時間がかかる資産」。大きく有形固定資産と無形固定資産の二つ。有形固定資産には土地や建物、機械設備などがある。無形固定資産には営業権や特許権といったものや、長期保有している有価証券や保有する子会社の株式なども。

流動負債とは支払手形や買掛金のこと。短期借入金は決算日から一年以内に返済しなければいけない。
固定負債は社債や長期負債のこと。

利益は売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、税引後当期利益の五つ。

利回りの計算式
利回り(リターン)=収入(キャッシュイン)/投下資本

株主資本コストの計算式
株主資本コスト=リスクフリーレート(2%)+β×マーケットリスク・プレミアム(5%)
株の動きが市場とまったく一緒であればβは1。市場全体の動きより大きい場合は1より大きくなる。市場全体の動きより小さい場合は1より小さくなく。

負債コスト:本来はこれから借入しようとする場合の金利。便宜的に過去の有利子負債の調達コストを代用している。
株主資本コスト:CAPM(資本資産評価モデル)を使用して算出するのが一般的。投資家であれば、当該企業に対するリスク認識を反映した「自分勝手割引率」を適用するのも一つの方法。
加重平均資本コスト:WACC=(D/(D+E))×(1-Tc)×負債コスト+(E/(D+E))×株主資本コスト
 負債と株主資本の額(時価ベース)で、コストの按分計算を行う。負債コスト(支払金利)は損金として課税所得から控除できるので、税引後で計算する。

WACCを下げることがIR(Investor Relation)=「投資家を対象にした」企業の広報活動)のミッション。

企業の収入の計算式
税引後営業利益=営業利益ーみなし法人税=営業利益(1-実効税率)
みなし法人税=営業利益×実効税率

企業にとっての利回りの計算
ROIC=税引後営業利益/投下資本

EVAの計算式
EVA=投下資本×(ROIC-WACC)
ROICとWACCの差をEVAスプレッド。これをプラス、拡大させることが経営者の使命。WACCを下げるには投資家のリスク認識を下げることが重要。投資家にとってのサプライズを避けるべき。プラスもマイナスも。

将来価値FVの計算式
FV=CF×(1+r)n乗
CF:元本。r:利率。n:年数。

現在かちPVの計算式
PV=CF/(1+r)n乗
CF:元本。r:割引率。n:年数。
将来価値を現在価値に直すときに使う利率のことを割引率という。

永久債の現在価値PVの計算式
PV=CF/r
CF:毎年のキャッシュフロー。r:割引率。
永久債とは、満期がなく永久に利息が支払われる債権のこと。

成長型永久債の現在価値PVの計算式
PV=CF/(r-g)
CF:毎年のキャッシュフロー。r:割引率。g:成長率。
成長型永久債:毎年一定の率で成長する永久債。

企業が将来生み出すキャッシュフローから、事業を継続するにあたって、支払う必要があるキャッシュフローを差し引いたあとのキャッシュフローをフリーキャッシュフロー。

フリーキャッシュフローの計算式
フリーキャッシュフロー=営業利益×(1-法人税率)
営業利益×(1-法人税率)=営業利益ーみなし法人税 +減価償却費ー設備投資ー運転資金の増加額

継続価値の計算式
継続価値=予測期間の翌年のFCF/WACC-g
FCF:フリーキャッシュフロー。g:FCFの成長率。

企業価値を高めるには、フリーキャッシュフローを極大化して、割引率であるWACCをできるだけ下げること。

投資判断の決定プロセス
①そのプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを予測する。
②予測したキャッシュフローの現在価値を計算する。
③投資判断指標の計算を行う。
④その計算結果と採択基準とを比較、基準を満たしていれば投資を行い、基準を満たしていなければ投資を見送る。
プロジェクトに投資するということは、「プロジェクトが将来生み出すであろうフリーキャッシュフローを購入する」ことと同義。

NPV法
NPV=プロジェクトが将来生み出すであろうキャッシュフローの現在価値(キャッシュインフローの現在価値)ープロジェクトに必要な投資額の現在価値(キャッシュアウトフローの現在価値)

NPV>0:投資を実行すべき
NPV<0:投資を見送るべき
NPV=0:投資してもあまり意味がない

NPV-R
NPV-R=キャッシュインフローの現在価値/キャッシュアウトフローの現在価値

IPR法
IPRは内部収益率(Internal Rate of Return)。「あるプロジェクトがあったときに、NPVが0になるような割引率」。つまり、「価値と価格とがちょうど均衡するような割引率」のこと。

IPR法における投資の意思決定のプロセス
①そのプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを予測する。
②プロジェクトのIPRを計算する。
③(IPR>WACC)ならば投資実行。(IPR<WACC)ならば投資見送り。
最初にキャッシュフローを予測するのはNPV法の場合と同じ。

IPR法の欠点
プロジェクトのキャッシュフローのパターンによっては、解が存在しない場合や、解が複数存在する場合があること。また、永続的にキャッシュフローが発生する場合は計算ができない。

企業価値という観点からすれば、NPV法での結果を反映したプロジェクトを選択すべき。「NPVの合計が企業価値(事業価値)になる」。経営者のゴールは企業価値を高めること。プロジェクトの規模を反映しないIPR法よりもNPV法が良い。プロジェクトの利回りが単純に高くても、企業価値に与えるインパクトが小さくては意味がない。

レバレッジをかける:「借入をする」ことを意味。いわゆる間接金融や社債などの、有利子負債を増加させることを指す。

MM理論
企業における「最適な資本構成」の割合がどれくらいかを判断。資本構成とは、有利子負債と自己資本との割合のこと。「モジリアーニ&ミラー理論」。MM理論の第一命題:「完全市場においては、企業価値は資本構成とは無関係に一定である」。完全市場とは、税金や倒産がなく、投資家や経営者が企業についてまったく同じ情報を持っていて、その情報を元に合理的に行動する市場。理論を組み立てるために単純化した市場。

Vl=Vu+TcD
Vl:L負債がある社の企業価値。Vu:負債がないU社の企業価値。Tc:法人税率。D:有利子負債の額。
有利子負債Dがあると、それに法人税率Tcを掛けた節税効果の現在価値TcDだけ、企業価値が高まる。

株主資本比率(自己資本比率):格付けに影響を及ぼす重要な財務指標のひとつ。株主資本が大きければ大きいほど「良い会社」とされる傾向にある。

配当と企業価値
NPVが0より高くなるような投資案件がなくなったときに企業が配当すべき。NPVは「投資を行うことによって、どれだけのお金が増えるかを表したもの」

自社株取得:株主に資金を還元する方法。申し入れに応じた株主から時価で株式を購入。自社株取得は、経営陣が自社株を割安だと考えている証拠。

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