20年前の約束を今日
人は、約束をする。とても小さな約束から普通じゃ考えられない程の大きな約束まで様々。
あなたは、20年前にした約束を果たして覚えているのだろうか、そもそも20年前にそんな約束をするようなことはあるのだろうか。
では、本編へどうぞ。
○「よし、そろそろ帰ろうかな」
"お疲れ様でした"と言い、僕はいつも通りの帰路に着く。それはこの会社に就職して早5年、ずっと変わっていない。
○「明日から年一で貰える1週間休みかぁ、実家にでも帰ろうかな」
そう考えながら今日も帰路を辿り、家に着く。
○「ただいま、って誰もいねぇか。いたら逆に怖ぇわ」
独り言を言いながらスーツを脱ぎ、ご飯の準備をする。ここまではいつも通り、だが今日はこの後がいつもと違う。普段ならご飯を食べる。だが今日は明日に向けて荷造りをする。
数時間後、荷造り、ご飯、お風呂と終わり、眠りにつく。
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○「母さん、父さん、ただいま」
僕は帰省していた、実家はやはり落ち着く。
「○○、いつまでいるんだ?」
○「んー、1週間休みだから5泊くらいかな。6日目には帰るよ」
「そうか」と父は言う。父親はそこまで喋る人では無いけど、頼りになる。
○「少し散歩してくるよ」
僕はそう言い、家を出て近くの公園を通った時に"将来結婚しようね!絶対だよ!"と言う言葉が聞こえた。
そこには二人の幼稚園児?らしき男女がいた。
結婚の約束を幼稚園児でするなんてと思ったが、実際僕もしていたから何も言えない。
思い返してみれば
『○○、おとななったらけっこんしようね!』
○「うん!おとなになったらみくにとけっこんする!」
僕もこんな約束していたなって思うと懐かしくなる。この約束の相手は髙橋未来虹、幼馴染だ。
未来虹とは小中と一緒だったが、僕が高校で他県の高校に進学したことによって連絡が薄れてしまった。
未来虹は高身長で可愛いしモテる。これでモテない方がおかしいと思うくらい。
そんな未来虹も僕ももう27歳、成人式にも参加してない僕は未来虹の今を全く知らない。
昔はこの公園で2人でずっと遊んでいた、夜遅くまで遊んで怒られたこともあった。
中学の修学旅行では、2人で抜け出して京都を回り、反省文も書いた。
「懐かしいな」と呟く僕は、果たして成長してるのだろうか。
あの日を思い出してしまう。
未『○○、東京の高校行くってほんと?』
○「まぁ」
未『なんで黙ってたの?ねぇ!隠し事はなしって言ったじゃん!』
○「ごめん」
未『あの約束、覚えてる?』
○「...」
未『覚えてる?覚えてない?どっち?』
○「覚えてるよ」
未『覚えてるならさ、それだけは守ってよ...』
○「わかった」
未『...よ』
○「え?」
未『なんでもない、これからも連絡するから!』
そう言って僕らは別れた。でもやはり、高校になるとお互いの生活が大変になり連絡は薄れる。
高校2年の春、連絡を取らなくなってしまった。
そこからここまで1度も話してない、未来虹がどこにいるのかも知らない。
でも、もう一度会えるなら。
そう願っていた。
夕方になり、帰ろうかなと思ったがこの公園で一服しようと思いタバコを取り出す。
なんで吸い始めたのか、今でも分からないを
恐らく、現実から目を背けたかったのかもしれない。
「ふーっ」と煙を吐く、その時
『あのっ!』
後ろから声がした、聞き覚えのある声だ。
僕は咄嗟に後ろを向いた。
そこには息を切らした彼女がいた。
『○○...?』
○「みく...に...?」
彼女に会えたんだ。ずっと会いたかった彼女に。
彼女は早歩きで僕のところに来た、僕の背中に腕を回して僕の胸に顔を埋める。
泣いていた。彼女は、いや、未来虹は泣いていた。
○「未来虹?」
未『ずっと...どこ行ってたの...?』
○「...」
未『寂しかった』
○「え?」
未「○○がいなかった毎日が寂しくて悲しくてしょうがなかった...」
○「ごめん」
未来虹は小指を立ててきた
未『彼女は、出来た?』
○「ん、2人だけ。両方2年くらいで別れたけどね。未来虹は?」
未『私は1人も作ってない。○○と約束してたから』
○「え...」
未『○○は絶対戻ってくるって思ってたから、彼氏なんか作ってない』
○「そっか...」
すると彼女は"浮気者!"と僕の胸をポカポカ叩いてきた。
○「未来虹、痛いって」
未『ばかばかばかぁ!!!!』
未来虹は泣きじゃくりながら、叩いてくる。
この時、僕の頭は未来虹を待たせてしまったこと、浮気まがいなことをしたことを申し訳なくなる気持ちでいっぱいだった。
今しかない、そう思い僕は口を開いた
○「あの約束、まだ使えるかな」
未『え...?』
○「20年前の約束、あれってまだ使える?」
未『もちろん、そのために待ってたんだから』
未来虹は泣きじゃくりながらそう言った。
未来虹は僕にしか幸せに出来ないとその時思った。
○「指輪はちょっとさきになるかもしれないけど、それでいいなら僕と、結婚してください」
夕日が照らすそこで、僕はプロポーズをした。
未『ほんとに○○って遅いね、私がその言葉のためにどれだけ待ったか!成人式にも来ないし!』
○「ごめん」
未『でも良かった、○○がこれからは私の隣にいてくれるから』
○「それって...」
未『ここでした20年前の約束は、今日叶うんだなって』
彼女は涙を拭いて、笑いながらそう言った。
未『結婚...しよ』
○「......」
未『ねぇ、何か言ってよ』
○「これからはどこも行かないから、未来虹の前から消えないよ。もう」
未『ふーん...根拠は?』
○「え」
未『10年も待たせたくせに』
○「じゃあ」
僕はそう言い、彼女を抱きしめて唇を奪った。
○「これでどう?」
未『変わらず女たらしなことで』
そんなこと言う未来虹の頬は夕日に負けないくらい赤かった。
未『もう置いてったりしたら許さないからね』
未来虹はボソッと言い残し僕の唇を奪った。
"やり返し"という彼女の目は澄んでいた。
まるで夕日が僕たちを祝福してるかのように赤く、そして暖かく照らしていた。
○「そろそろ帰ろっか」
未『うん、私の家寄りなよ?』
○「え?」
未『結婚の挨拶』
○「スーツ着てないし、なんも買ってないから明後日にする予定だったんだけど...」
未『しょうがないなぁ』
こんな会話をしながら手を繋いで歩く僕たち。
約束をした場所も約束を果たした場所もあの公園。
○・未「『ねぇ』」
2人の声が重なる
○「せーので言おっか」
○「せーの」
○・未「『大好き』」
2人して笑いあった。
この幸せはもう離したくないし、話すつもりも無い。誰でも、神様でも何でもこの幸せを離そうとしてくる人がいても、僕は離さない。
それほどまでに彼女が愛しい。
幼稚園児の僕へ
あの時の約束、20年経った今果たしたぞ。
それも、同じ公園でな。
20年後の僕より。
END