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トレーニングの全体像を複合的視点でみる

そもそもトレーニングとは?

私は動いていればそれは全てトレーニングであると考えています。立つ、歩く、急いで駆け足になる、座る、頭上の棚の上の物を取る、階段を登ると言った何気ない日常動作から意図的な運動全てがトレーニングに入ると考えています。

例えばその中でより筋肥大のトレーニングはと聞かれたらウエイトトレーニングがいいかもねと答える事はあるかもしれないです。

だから、週にたった何回かの一回数時間のトレーニングのみではなく、日常生活というそれよりも遥かに長い時間のトレーニングの部分を見直し適切にデザインにする事でより目的が効率的且つ効果的、そして高度に達成されるのではなかろうか。

トレーニングの目的とは?

これは各競技力向上の為、より美しく見た目の為、より健康的に動ける身体、趣味をより楽しむ為など多岐に渡ると考えられる。

このそもそもトレーニングする目的を見誤ってはいけないとつくづく私は感じる。

競技力向上の為に筋力向上が必要でその為にウエイトトレーニングを取り入れているのであれば自ずと取り入れるべき種目とそうでない種目の取捨選択は絶対にすべきである。

そして更に言うと筋力トレーニングの方法はウエイトトレーニングだけでは決してないはずです。後ほどご説明しますが、身体に重い重りを担ぐほど目的の動作とは違う動作の中での筋力強化になっている事があります。プラスの側面だけにとらわれているとこのような事を見落としてしまう可能性が高くなります。必ずしも筋力という要素のみが向上すれば目的が達成されるわけではないという事を気に留めておく事が必要でしょう。そして筋力向上を図る為に必ずバーベルやダンベルといった外的負荷を用いなければならないと言う事もありません。

つまりあるトレーニングの負荷の重さや速度、フォーム、プログラムの流れ、取り入れている種目と取り入れていない種目、ピリオダイゼーションは目的次第であるとはっきりと言えます。

従ってあるトレーニング動画や現場を見てあれは違うでしょとか、こうした方がもっと○○に効くから効果的だよとツッコミを入れたくなるケースもあるかと思いますが、それはその人がトレーニングをする目的によって多分に変化する為トレーニング実施者もしくはその指導者にその意図を聞いてからでないと議論は進まないと言えます。

更に話を進めるならば、これは同じ目的でも考え方や大事にしている事によってもトレーニングの取り組み方は多かれ少なかれ変化してきます。

そして、目的が違えど身体の構造に沿った方法を構築していくべきというのは共通項として絶対条件であると考えております。

この身体の構造というのは全ての人が似てはいるが完全に同じでもないと言うことの考慮も絶対に必要であるという事です。

生活習慣や運動習慣、取り組んでいる競技競技や趣味、遺伝等の先天的要因、日々過ごしている環境の違いが挙げられます。

普段、地に足をついて陸の上で動いている人と体操競技やクライミングのような運動習慣のある人、水中の中でより速く強く動く事が求められる人、普段の日常生活のみの運動習慣しかない人、これらの違いで身体の骨格を始め諸器官の構造や機能は大きく変わってきます。

つまり、これらの違いを考慮した上で目的が違えど共通する事とそうでない事を抑えてその上でトレーニングを組み立てていく必要がありますよね。

これらを踏まえるとある目的に向かってトレーニングしていたら目的に向かって進んでいるケースもありますが、逆に後退しているケースもあると考えられます。

つまり、取り組むべき事と取り組むべきでない事両面があると言えます。これに関してのフィードバックは対象者の感覚の敏感さによる部分も大きいのですが、いかに目的に対して後退させないかが重要になってきます。

各トレーニングにおける必要要素と各トレーニング要素のアクセントの違いを考慮する複合的視点

まずトレーニングにおける必要要素として、動作様式、可動性、安定性(必要に応じて低〜高強度の範囲)、筋力、筋速度、無酸素的持久力、有酸素的持久力、SSCを用いた弾性力、身体内環境、身体外環境、フォーカスやキュー、回復力、休息、栄養、マインドセット等直接的もしくは間接的にトレーニングに作用するものがあります。

私は直接身体を動かして身体を目的に合わせてより良くしていく運動指導者なので実際に身体を動かして得られる部分に的を絞って説明させて頂きます。

それでは次に各トレーニング要素のアクセントの違いについてですが、分かりやすい例で言えば各種スポーツ競技等の無酸素性と有酸素性のアクセントの違いがあるかと思います。

その中で陸上の投擲種目や短距離種目や重量挙げとマラソンやウルトラマラソンは両極端にありますよね。

それではこれから私なりに各要素のアクセントの違いを複合的視点による分析を例を挙げて解説いたします!!

『高重量バックスクワットと陸上のスプリントの違いから得られる知見』

まず両者の共通項として陸の上で立つ事を基礎としている動作、代謝要求割と近い(無酸素性と有酸素性比重が近しい)という事が挙げられます。

次に相違点として、動作様式、可動性、安定性、筋力、筋速度、SSCを用いた弾力性、フォーカスやキュー、身体内外環境等が挙げられます。

それではまず動作様式から見てみましょう。動作様式とは実際の動作の外見的特徴やその時の力の方向性や流れの事を指しています。

まず、両者共にトリプルフレクション&エクステンションが起こっているように見えます。これは事実なのですが、細かくみるとその起こり方はまったく違います。

例えばトリプルエクステンションを矢状面から見ると膝関節の伸展の幅は理想的にはスプリントでは相対的に小さくスクワットではより大きいです。

膝関節の伸展の幅が大きいという事はそこに関与する大腿四頭筋の活動比重は増えるという事です。更にその結果、股関節伸展は小さくなると言えます。

別の視点で見るとスクワットはスプリントよりもより膝を大きく強く動かす事を学習してしまうと言えます。

特異性の原理から考えるとスプリントを鍛える為に高重量スクワットを行うとスプリント動作の際にはあまり必要ない膝関節の伸展をより強力にしてしまうと言えます。

身体は動きの癖として自分のストロングポイントを基本どんな動作でも使いやすいのでどうしても出てしまいやすいです。

いや、高重量スクワットは股関節の伸展も入ってるけどねという声も聞こえてきそうですが、股関節と膝関節の伸展比重という視点で見ると明確に違ってきます。

なのでスクワットをする事で得られるプラスの面ももちろんありますが、それだけではないですよということです。それも考慮して他に理由があってスプリント能力を上げる為に高重量スクワットという選択をしているというのならば別にいいと言うことです。

続いて体幹部に関する外見的特徴の差から見える知見についてです。考え方の差による違いもありますが、私はより理想的にはスプリントの際はコントロールされた中で体幹が3Dによく動き、高重量スクワットでは結果的に体幹部が剛体化されてあまり動きは起こらないと考えております。

この高重量スクワットの際に結果的に体幹部が剛体化されると言うのがポイントです。固めようとして固まっているわけではないと言うことですね。これに関しては別の機会に書こうと思います。

少し話が逸れてしまいましたが、両者の体幹部の特徴の差異は何によって生み出されているのでしょうか?

私は身体にかかる負荷の量とそのかかり方、ポジションの違い、衝撃負荷の有無、環境の違いがあると考えております。

周知の事実だと思いますが、高重量のスクワットをする際に脊柱が大きく動いていては傷害につながりますし、そもそも筋力を効果的に鍛えることも難しいはずです。

だから結果的に体幹部が剛体化されて四肢の関節である股関節や膝関節、足関節がより大きく動くと言えます。

逆にスプリントの際は高重量のスクワットの時のような負荷のかかり方はしません。何より空中の局面があるぐらいです。

つまり体幹がある程度動いても問題ないので、むしろある程度体幹部が動く事で体幹部から生まれる力も積極的に使うべきです。更に上肢の動きもあるのでそこからの連鎖反応としてより体幹も動くはずです。

結果、高重量のスクワットに比べて股関節や膝関節、足関節の動きの幅自体は小さくなるはずです。

こちらの視点で特異性の原理を用いて分析してみるとスプリントの為に高重量のスクワットが本当に有効策であるのか考えるべきです。

もちろん下肢の伸展力は上がります。しかし、体幹部が結果的に固まると言う学習を強め、それに伴う筋骨格の適応が起こります。体幹部が適度に動きながら四肢が適切に動くという動作の強化にはならないと考えます。いや、動きじゃなくて筋力を鍛える為に高重量のスクワットをすると考えている方もいると思います。しかし、そもそも筋活動を伴わない動きはないです。全てのボディメイク的な種目も動きである事に間違いありません。より正確に言うならば、○○筋がより活動を強いられる動きというだけです。だからどう頑張っても動きと筋力は切り離せない関係なのです。

もちろん程度の差は多分にあります。そしてスクワットも動きである事に疑いの余地はありません。筋力に関してもより遅い動きの中で筋力発揮とより速い動きの中での筋力発揮は全然違います。そして何より時間的余裕が多い中での筋力発揮なのか時間的余裕が少ない中での筋力発揮なのかでも筋力と一口に言っても全然違います。結論、高重量スクワットは高重量スクワットの中での力発揮という事であると考えます。それ以上でもそれ以下でもないです。

以上のように筋力=最大筋力と決めつけて一要素のみに目をつけて思考しその思考の中でトレーニングを取り組んでいては効果は限定的です。

一つの要素を変化させる事で他の多くの要素も変化する事も考慮してそのトレーニングがある目的に対してプラスなのか?マイナスなのか?どちらでもないのか?を安易に判断する事なく現状の結論を出すべきです。

いかに複合的視点で持って色々な動作とその繋がりを観察出来るかが鍵になると考えております。だから、やるべき事はもちろんそうですがやるべきでない事も同じように考慮すべきと言えます。当たり前だと感じていた事が実はそうでもなくいちいち気にしなくていい事も多いように感じます。

前章の知見を他のケースでの具体的なトレーニングの際に活用する為のアイデア

今回はスプリントと高重量スクワットを比較材料にしましたが、言い換えると身体に対して外的負荷がかかっている動作なのか?そうでないと動作なのかと変換する事も可能ですよね。

多くのスポーツ競技で高重量スクワットのような負荷が常時かかりながら動かなければならないと言うものは多くはないです。相手にタックルされたり、引っ張られたりしてほんの一瞬はさらに近い局面もある競技もありますが常時というのは限られてきます。絶対筋力という事のみに目を向けるのでは無く、実際の動作の中で負荷のかかるタイミングや量、方向性等も複合的に判断した上でより良いものを選択すべきであると考えます。

このようなアイデアと筋力トレーニングはウエイトトレーニングのみでないと考えると色々な事が思い浮かび上がるかもしれません。

例えば急勾配の登り坂を早歩きやスプリントは有効策であると考えられます。その理由は前述の通り、動作の特異性を考慮して複合的視点で見てみると分かる事であります。

つまり事筋力トレーニングに関して言えば重りのような常時かかる負荷を上げていくと言う方向性で鍛えるのと、衝撃負荷を用いたり、より体重を垂直方向に持ち上げるようなトレーニングにする事で体重を上手くトレーニング負荷として使う形で鍛えると言う大別の仕方も考えられます。

もちろん後者の方法で鍛えるにはアイデアを捻らないと負荷を適切にかける事自体が難しいですが、専門家としてはチャレンジすべき部分だと感じます。

前述の通り、重り等の外的負荷をかけるほど実際の動作とは似て非なる動作になる事も多いと考えられます。

目的はどんなパフォーマンスつまり動きを強化したいのかによって筋力トレーニングと一口に言ってもその方法論は微妙に変化してくるはずです。

まとめ

今回はトレーニングの全体像を複合的視点で見てみると思い浮かぶ私のアイデアを共有させて頂きました。

そもそもトレーニングってどこからどこまでとか、目的によっても考え方によってもトレーニングの仕方は変わるからある人が動画で○○というトレーニングをしていたから私も同じ事をやれば同じ効果が出るかと言えば必ずしもイエスとは言えないです。動画で見た人は事前に、もしくは他の日に別のトレーニングをしていてそれらと統合された結果動画で見たトレーニングが上手く適合している可能性が高いという事です。

だから、誰かが取り組んでいる動画のトレーニングを取り入れるならば、○○さんが取り組んでるトレーニングだからやるのではなく、このトレーニングはこう言った理由でこの部分に効果があるなと実践してみたり考えたりして良ければ使えばいいし、微妙ならば使わないと言うように一度判断する時間を作るべきです。

そして具体例として筋力トレーニングを取り上げてそれを行う時に考慮すべきと全体要素の一部について私なりに紹介させて頂きました。

実際問題特異性が全く無いトレーニングは中々ないですが、目的に対してより良いトレーニングをする為には全体像の一部に固執してプログラムを立てるのではなく、絶対に抜けない部分とある程度抜けてしまっても強化のために許容すべきと言うのを分けて考えるのがより良いです。

今回共有させて頂いた内容も私なりの考えでしか無く、これが絶対的に間違いないとは微塵もおもいません。私自身も時が経てば考え方が変わるかもしれませんし、実際考え方も時間と共に色々と変わってきた事実もあります。

ほんの少しでも皆様の参考になればとても嬉しいです。最後までご覧下さりありがとうございました。









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