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一人の少年の恋が、人工知能を生み出した

※ネタバレあり

皆様は『イミテーションゲーム』という映画を御存知だろうか。

第二次世界大戦下、連合国側を苦しめたナチスのエニグマ暗号を解読すべく、イギリスの頭脳エリート達で構成された暗号解読チームの奮闘を描く映画だ。

主人公になるのはアラン・チューリングという実在の天才数学者。

映画の構成とは異なるが、少しその内容を紹介する。

ナチスの快進撃を支えた暗号、エニグマの解読という難題に立ち向かうべく、イギリスは数人の天才を召集した。

その中の1人がアラン・チューリング。

天才にありがちなコミュニケーション下手という性質から、最初はチームに馴染めなかった彼が、徐々に仲間から理解され、ついにはエニグマ暗号の解読に成功する。

しかし、暗号解読の任務は極秘であったため、任務終了と共に仲間達と離散、戦友は他人に戻ることを余儀なくされた。

程無くしてアラン・チューリングは逮捕される。マンチェスターで出会った青年と関係を持ったことが通報されたからだ。

当時のイギリスでは、同性愛は違法だった。

薬物による去勢又は収監を迫られたアランは、薬物による去勢を選択した。

薬物の作用で徐々に生気を失っていくアラン。

そんな中、アラン宅に泥棒が入る。捜査に来た刑事に対しアランは、

「何も盗まれていない」

と証言し、刑事を追い返す。

独りになったアランは、エニグマ暗号の解読のために開発した初期人工知能とも言える装置、通称クリストファーと向き合う。

極秘任務で開発したクリストファーがなぜここにあるのか。
全ては無かったことになったはずなのに。

ここで映画は終わる。

実は泥棒が入られたシーンが冒頭にあり、そこから過去の話→現在という形で映画は進行するが、
うまく説明できないので時系列に書いた。

映画ではっきりとは描かれていないが、アラン・チューリングはこの後自ら命を絶った。

理由は不明だが、アランと一緒に映画『白雪姫』を鑑賞した友人は、彼の口からこんな言葉を聞いている。

「魔法の秘薬にリンゴを浸けよう。永遠の眠りが染み込むように。」

アランの死因は青酸中毒だった。そして現場にはかじったリンゴが落ちていた。

アランは白雪姫を真似て永遠の眠りについたのだ。

何故彼が死を選んだのか、その動機は、彼の少年時代に遡る。

彼には親友がいた。名前はクリストファー。

後にアランが作り上げた暗号解読機の愛称と同じ名前だ。アランは彼の名を暗号解読機に付けたのだ。

コミュニケーション下手だったアランは学生時代から周囲に馴染めず、常に浮いていた。

そんな彼を唯一受け入れてくれたのがクリストファーだった。

アランと同じく天才的な頭脳を持つクリストファーは、アランを理解し、二人は親友となった。

ただ、アランには恋愛感情があった。

アランの恋心と共に青春の日々を送る二人。

しかしある日を境に、クリストファーはアランの前から姿を消した。

後にアランはその理由を知ることになる。

彼は病死した。

アランの気持ちは如何程であっただろう。察するに余りある。

アランがここまでの天才数学者、後にコンピューターの父、そして人工知能の父と呼ばれるまでの功績を残したのは、この経験があったからではないだろうか。

アランは、クリストファーを復活させようとしたのではないか。

それが暗号解読機にクリストファーと名付けた理由だ。

クリストファーへの恋心がクリストファーを生んだのだ。

彼は泥棒に入られた際、

「何も盗まれていない」

刑事にそう伝えたが、何も盗まない泥棒などいるだろうか?

おそらく「何か」が盗まれた。

「何か」とは初期人工知能クリストファーの核心となる部品、あるいは設計図なのではないだろうか。

しかしクリストファーはエニグマ暗号解読という極秘任務で生まれたもの。

同じものを自宅に保管していた等と言えるはずがない。だから、
「何も盗まれていない」と答えたのだ。

しかし、失ったものは大きかった。
彼は愛するクリストファーを二度失ったのだ。

愛する人を二度失う。通常あり得ない。

天才故の、想像を絶する悲劇。

思い詰めた彼は、リンゴをかじり、王子様が迎えに来ることに望みをかけたのだろう。

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私が書きたかった話はここまでだが、ある疑問がまだ残っている。

それは、誰がアラン・チューリング宅に泥棒に入ったのか。

実はこの泥棒を手引きしたのは、アランが逮捕されるきっかけとなったマンチェスターの青年であると言われている。

つまり、アラン逮捕と泥棒事件は、最初からアランの持つ「何か」を狙って計画的に実行された可能性があるのだ。

黒幕はいったい誰なのか。

※ここからは単なる妄想に過ぎません。

かじったリンゴが、アランの残した最後のメッセージだとしたら?

現在、人工知能の最先端を進む国はどこなのか。

皆様も、思い当たる節があるのではないだろうか。

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