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『もしも徳川家康が総理大臣になったら』が面白い!

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』という、どこかで聞いたことがあるようなタイトルの書籍がまた面白い。

あらすじは、

「コロナのクラスターが内閣官邸で起こり、総理大臣を始めとする重責たちが軒並み死亡してしまった。政府が密かに進めていた偉人をAI化し復活させるプロジェクトにより蘇った家康や信長・秀吉・龍馬らが、現代日本の舵を取る」

という破天荒な設定の小説だ。

書店で手に取って本書を知ったのだけれど、書き出しから面白かった。コロナで成長を止められた世界経済の描写の後、こう続く。

しかし、日本においては、420年前に一度だけ、国の成長を意図的に止めた人物がいた。

それが、徳川家康である。

家康は意図的に”領土を拡大して成長する”ことを止めた、世界でもまれに見る異質なリーダーであった。

結果、江戸時代は265年間も続く、太平の時代になった。

「一人が一兆円稼ぐ起業ではなく、だれもが600万円稼げる起業に」
「地理的な覇権ではなく歴史的な実験を握れ。老舗企業のように」

僕自身、こんな生意気なことを言っていることもあって、我が意を得たりと感じてしまった。ほぼ即買いだったのである。

「徳川内閣組織図」を見ただけでも胸が踊る。

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歴史トリビアも豊富なのだ。

「徳川綱吉は海外では名君として知られている。生類憐れみの令は捨て子や行き倒れの人々をなくすために発布された。封建社会では世界的に例のない人権政策だった」

そんなこんなで目を引くのである。

本エントリーをどうしても書きたくなった元凶は、元禄のバブルを作り出した天才経済官僚、荻原重秀の言、

「貨幣は国家がつくるもの。たとえがれきであっても行うべし」

だった。

貨幣にするのは金のような価値あるものでなくても、がれきでも紙でも大丈夫だという話だ。

正直僕は経済に明るくはないけれども、現代の貨幣は国家の信頼によって成り立っているはずだ。「現代国家ではいくらお金を印刷してもハイパーインフレにはなり得ない」と語る経済学者がいらっしゃるらしいけれど、もし国の持っている信頼を超えて紙幣を発行してしまったらどうなるか。

「貨幣は国家がつくるもの」。お金は国の信頼によって成り立っているのだから、破綻して当然だろう。今のジャブジャブなお金の刷り方は、「自分の国の値段がいくらか」を計るチキンレースに見える。

ある先輩は「中国の人は自国の貨幣をぜんぜん信用していない。日本人の通貨に対する信用の仕方は異常だ」と語ってくれたけれど、通貨にしても国にしても決して盤石ではない。

異常な量の国債を発行して、異常な量のお金を流通させてしまっている。金余りと言われるほどに。それでいて、必要な人にはまったくお金が回っていないのだ。これは世界の流行だけれど、日本だけ見ても国債と地方債を合わせた借金は1200兆円。

現金流通残高も、
2000年には60兆円
2016年には100兆円
2020年には120兆円
と膨らみつづけている。(以下を参考にさせていただきました)

失敗国家というセンセーショナルな言葉がある。Fund for Peaceというアメリカのシンクタンクが数値化、ランキング化している。2006年からつづく178国の調査で、半数以上の国がずっと要注意国もしくは失敗国家に分類され、持続可能な国に分類されるのは2012年から、1年につき13〜15カ国しかない。

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日本は安定国家(緑色)に分類されているが、その上のランク、「持続可能な国(青色)」には入っていない。

国数 と 年

要注意ランク以下に位置する国の数を年別にグラフにしてみた。コロナでその数が上昇するかと思ったのだが、実際はガクンと下落していた。2020年が113カ国、2021年が93カ国である。

失敗総ポイント と 年

世界の国々の失敗スコアの合計も、ガクンと下がっている。

そんな中、評価を落としてしまったのが米国である。

物質的に豊かで超先進的な医療システムを持ちながら、政治は分裂し国民の意識もバラバラ。去年の警官の暴行事件を引き金に、米国は建国以来最大の混乱を迎えることとなった。大統領選の無効を求め、議会が占拠されるほどに。議会の占拠とフェイクニュースの影響で、死者が35万人にも及んだ。(私訳)

データを提供するトップページにそう記述されている。

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上のヒートマップは過去5年間の失敗国家指数の悪化度を示しているのだけれど、英米の凋落が激しいのが分かる。10年単位でもほぼ同じだ。

自分の国の値段はいくらか?

最後の決算にその答えを見て世界は滅ぼうとしているみたいだ。

コロナで経済成長を強制的に止められたのに、要注意国家と失敗国家の数が急落していた。これは偶然ではないかもしれない。

家康は意図的に当時の”領土を拡大して成長する”ことを止めた、世界でもまれに見る異質なリーダーであった。

結果、江戸時代は265年間も続く、太平の時代になった。

信長、秀吉の急拡大路線を止めたのが家康だ。秀吉までは血を血で洗う戦乱の世だった。

日本の老舗企業は拡大を志向しない。老舗企業の従業員同士は、拡大企業と比較して遙かに結びつきが強い。拡大企業の従業員は休日になると他人同士だが、老舗企業の従業員同士は休日でも仲間なのだという。(静岡大学 舘岡康雄先生)

拡大志向は人を疲弊させてしまうが、非拡大志向には人を安定させる力がある。

2020年が教えてくれたことは何か。健康危機に立ち向かうとき、健康危機しかないと考えて対策してしまうなら失敗を犯すだろう。どれだけインフラが整っていようが、どれだけ医療が発達していようが、人がまとまっていなければ、犠牲を共有していなければ危機から立ち直ることはできないのだ。(私訳)

失敗国家の情報を提供するページトップにそうあった。

僕たちは進むことばかりに目を奪われて、立ち直ることの重要性を忘れていたのかもしれない。一度立ち止まって回復を待つことを。性急に過ぎて、傷つけ合いすぎたのかもしれない。

傷口を押さえるとか、助け合うとか、これまでを振り返ることとかを忘れていたのかもしれない。

子供の頃の家康に、こんなエピソードがある。

二手に分かれて合戦の練習をしていたところに竹千代(家康の幼名)とお付きの者が通りかかった。

「もう結果は見えていますな」

お付きの者は勢い盛んな軍勢を指さしてそう言った。
だが竹千代はまったくの逆だと言う。

「どうしてでございますか?」
「向こうは人数は少ないが、けが人を助けながら耐え、まとまりが増してきておる。顔つきもいい」

ほどなく勢いは逆転し、そのとおりの戦果となった。

時代は進む時代から立ち直る時代へと成熟したみたいだ。
進むのではなく、立ち直ることを大切にする時代に。
もし立ち直りを待てないのなら、世界は崩壊してしまうだろう。

教育も組織も国でさえ、それを軸に構成し直さねば。
そして僕は、その鍵は非拡大にあると思う。

・・・もちろん他にもあるはずなのだ。
・・・諸兄姉はどうお考えだろうか?

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お読みくださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃

起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)

下のリンクの書籍出させていただきました。
ご感想いただけましたら、この上ない幸いです😃

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